21世紀らしい協同組合経営(論)の模索

 21世紀はグローバル化の一方で協同と共生の時代と言われるし、地域に密着した協同組合の出番だと私も思う。今こういった情況の中で焦眉の課題は、それにふさわしい協同組合の経営のあり方にあると言って過言ではない。

 経営とは経済的行為であるが人と人との組織的営みという点で奥が深い。企業や協同組合には経営があり、国や地域にも経営がある。営利・非営利に関わらず経営をめぐる問題は常に古くて新しい問題である。

 特に経営の中で現実的関心事は「赤字・黒字」を除けば、言葉は悪いが『人を動かす』の類であろう。生協や企業においては経営者が如何に立派な理念・戦略や方針を持っていても、それを人に伝え、その人たちが動かなければ経営活動は進まない。動かすのが機械だけなら工学の知識で十分であるのだから。その「人を動かす」ために世には様々な経営組織論が紹介されており、リーダーは勉強することになる。

 ここで奇妙な事態に遭遇することになる。そもそも「経営組織(論)」とは、社会的役割や社会的位置づけといった理念・目標(ビジョン)の達成を出発点にして、どの様な組織・組織運営が最もその達成にふさわしいかを希求することによって定まるものだと思うのだが、「指揮・命令」「権限で人を動かす」など伝統的な経営観・経営組織論は企業も伝統的協同組合も差は見出しえなくなっている。そう感じるのは私だけであろうか。

 もし、生協であろうがワーカーズであろうが協同組合で働く人に「協同忘却、非自発的労働、指示待ち」が散見されるようになったら、協同組合経営(論)は完全に岐路に立っていると言える。

 20世紀は協同組合の助走の世紀であった。借り物の経営観・経営組織論でこれだけ発展した。構造不況、グローバル化で始まった21世紀は地域に根付く期待される協同組合を、自らの運営論をも模索しながら実現しなければならない。

岡安喜三郎(協同総合研究所専務理事)



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