社会的経済普及課題に関する国際会議の総括と結論

プラハ、2002年10月24日〜25日

訳 岡安喜三郎


 社会的経済普及課題に関する国際会議には、欧州連合(EU)のすべての加盟国、加盟候補国、アジア・アフリカの数カ国から600人以上が参加した。その構成は大変多様であった。出席者のほとんどは社会的経済セクターの代表で、特に多様な協同組織と連合体の代表であった。強力なのは財団と非営利団体の代表であった。従業員参加を伴った企業(いわゆる参加型企業)の代表も参加した。社会的経済セクターのすべての構成部分が集められたと言える。

 また、大学関係も強力な代表団を抱えた。会議には、社会的経済の課題が理論的な研究、教育、調査の主題となっているヨーロッパの多くの大学の代表が出席した。15の西ヨーロッパの大学が集まっている汎欧州ネットワークEMESに関わる大学のほとんどが関係した。会議日程の二日間に催され、また就中拡大ヨーロッパにおける社会的経済設立問題に焦点を定めたA1分科会は社会的経済の理論的基礎を集中的に取り扱った。

 開会式にはチェコ共和国政府首領が出席し挨拶を述べた。チェコ共和国からは他に、農業大臣、労働社会省(MPSV)第一秘書が政府代表として出席した。会議にはチェコ共和国議会両議院立法府の代表も姿を見せた。すべての議会政党の上院議員・代議士の会派にこの会議の予定会場を知らせておいたにも関わらず、チェコ共和国議会のたった一人の代議士しかこの会議に出席しなかった。この会議の一つの目的がすべてのEU加盟候補国、特に開催国の立法府代表に社会的経済について良く知ってもらうことにあったので、残念ではある。実は、立法府の代表は、この会議の参加対象グループの一つとしていたのである。

 社会的経済セクターは、多くのEU諸国および欧州委員会の各機関において、相当な支援を享受している。これは、欧州連合からのみならず加盟候補国からの政府当局の代表の参会に反映していると見て取れた。たとえば、ロシア連邦の経済開発商業省の第一副大臣がそうである。欧州委員会各機関代表に関しては、地域委員会、経済社会評議会、欧州議会の各代表が出席した。欧州連合を代表して駐チェコ大使ラミロ・シブリアン氏が、欧州委員会ビジネス情報技術担当委員エルキ・リッカネン氏のメッセージを通訳しながら紹介挨拶を行った。氏は、この会議およびこれらの問題に一般に欧州委員会機関によって付与される重要性を強調した。氏の挨拶は全体として、社会的経済セクターの一つの柱としての協同組合の重要な役割について強調したことが特記される。氏は、欧州委員会が加盟国だけではなく加盟候補国においても社会的経済の発展を支援し続けてきたこと、今後もこの傾向は続くことを伝えた。

 当初は、この会議は参加者500として準備されたが、実際の出席者は2割も増えた。参加者は33ヶ国(EU16ヶ国、中・東欧13ヶ国、欧州外4ヶ国)から約650人であった。しかしながら、EU諸国からの参加者と加盟候補国からの参加者の数には著しい不均衡が見られた。EUの社会的経済セクター代表が大多数であった。最も強力な代表は、イタリア、フランス、ベルギー、スペイン、スウェーデンの社会的経済セクターからであった。加盟候補国に関して言えば、最も強力な代表が出席したのはポーランドであった。

 予定された会議のプログラムは完璧にこなし、二日間のコースで開催された七つの分科会では、すべて活発な議論で盛り上がった。同じことは、チェコ共和国上院建物で開かれた、欧州委員会当局代表と各国の社会的経済担当当局代表向けの併設プログラムの進行についても言える。同様に、チェコ共和国労働社会大臣が組織した関係閣僚会議もそうである。

 会議プログラムの一部として、夕食会が会議参加者向けにゾフィン・パレスの講堂で準備された。祝賀の夕べは10月25日、プラハ・シティーホール社交場において、様々なヨーロッパ諸国からの社会的経済セクター代表団を受け入れて、首都プラハ市助役の提供によって歓迎会を兼ねて開かれた。

会議および個々の分科会の結論

 会議の概括的結論は閉会時に、欧州協同組合統合委員会(CCACE)委員長Mr. _tienne Pflimlinによって定式化された。個々の分科会の結論は各報告者によって定式化された。

 会議の概括的結論に関して、それらは会議の奮闘目標を表現してはいない。しかし、社会的経済セクター全体の将来の活動の出発点と斟酌される。

 会議は本質的な問題、すなわち、継続的発展、社会結合、雇用支援、社会対話、事業と資金調達道具の拡大、社会的経済の近代化のような問題に言及した。会議は、ヨーロッパがグローバルな変化のモデルを、人の深い尊敬、職業の自由、世代間の連帯に基づいて創造できるしするべきであるという発想から、また、豊かな大きなヨーロッパという発想から進行した。多くの国々は、この政治的・経済的・社会的集合体に速やかに接近するであろうし、他の国も後に続くであろう。我々は、東西ヨーロッパ双方の国々にとって、また、社会的経済にとって、このチャンスの拡大と考える。

 ヨーロッパはマーケット以上のあるものである。それは。競争力と連帯のバランスを探している社会のモデルを示している。協同組合や相互保険会社、財団はこのモデルの重要な構成要素である。これらの業績は広い領域をカバーするその影響力や振る舞いに従って計られるものではなく、その価値の主な評価および共通利益の満足を獲得した割合に従って判断される。

 ヨーロッパ特に欧州委員会は、継続的発達の基礎的要素として、またEUの競争能力と活力として、事業精神を長い間積極的に支援し続けてきた。そんなわけで、社会的経済の企業はその正統性、位置、役割を東西双方において持っているし、それらの企業が大きな貢献をするヨーロッパの経済構造においてその現実の過程に便宜を図ることが必要である。

 この点について会議は、社会的経済のすべてのカテゴリーに共通する以下の四つの原則を定式化した。

1.社会的経済の事業体は所定の地域において既に記されてきている。それらの事業体は地方当局との関係を構築する。それらは大抵、困難に襲われたところなどの農村地域の経済を確実にする。すべての社会的経済の事業体は、地方や地域の発展の場面に関して最も重要な行為者である。

2.社会的経済の事業体は統合の方を好む。それらの事業体は目標として、人々の排斥を防ぎ、反対に、もっとも社会的に不利な人々を含むそのメンバーや従業員の統合ないし保護を如何なる差別もなしに促進することに着手する。もう一つの目標は連帯への支持である。それらは(メンバーや従業員の)選択の政策を行使しないように、協同組合は社会的リスクの減少を成し遂げる。

3.世代間連帯は、社会的経済の事業体の一つの特質である。それらの事業体は不分割積立金を構築し、リスクと原資の相互関係に基づいた社会的保護を構築する。非営利性と民主的マネジメントは、これらのシステムの共通の特徴である。社会的経済の事業体は、社会対話・市民対話への積極的参加を通じて、一つの社会としての欧州建設に貢献する。

4.社会的経済の事業体の機能は、社会的責任の概念に近く、それらの価値と実践は、欧州委員会がEUを自力で守る価値、すなわち社会的責任と連続的成長−−従業員と利用者の参加、連帯、自己開発−−と関連づけた価値として促進したいものと大変近い。地域共同アプローチの枠内で市民にサービスすることは、熟考された上での優先事項である。

 社会的経済セクターの将来の活動の見地から、会議は注意を集中すべき幾つかの領域を明らかにした。

A− 中・東欧諸国およびEU諸国からの社会的経済の団体の中にある最良実践や、効果的な活動に関する熟考の財産化と交流の実行。例えば、市場や公共機関によっては満足が得られない人々のニーズに応えるための就労機会の創出によって、また教育や被排斥者の雇用を通じて、自治と連帯の原則に留意することによる革新的な能力の強化および具体的な解決策の探求を通じて。

B− 社会的経済の事業体は、競争的で強力な経済の建設、社会結合の創出に積極的に貢献しなければならない。大きな超国家的集合体に向けた活動に関して、社会的経済の事業体は、特に情報技術・通信の分野で、中・東欧において東西間の提携を築き上げ、協同のきずなを確立しなければならない。同時に、高い効果性を達成するために対等のネットワークを編成しなければならない。

C− 拡大ヨーロッパにおける継続的成長はまた、社会的経済を支援する欧州共同体と国家の政策によって保証される。新たなアプローチの要素として、十の加盟候補国家において、SCOPEモデルの超国家的経験から生ずることのできる、また社会的経済セクターのためのPHARE(*1)プログラムの開始をも保証できる社会的経済の開発プログラムを実施することが推奨される。

(*1) PHARE:中・東欧諸国に対するEUの支援プログラム。PHAREとは "Poland and Hungary: Action for Restructuring of the Economy" の略で、元はポーランドとハンガリーの民主改革を支援するために1989年に開始された。その後、対象を中・東欧の13カ国に広げる。94年12月のエッセン欧州理事会以降、PHAREもEU加盟という目的実現のための具体的な行動に重点が置かれるようになってきている。

D− 財政調達手段の必要性が上昇している。それは加盟候補国において社会的経済の事業の形成と拡大のために必要とされる。パートナーは、相互保障基金、協同組合銀行、欧州開発銀行のようなヨーロッパ金融機関の枠組みでそれらを見出す機会を持つべきである。共同体プログラムは、資産譲渡の際や、基礎資本もしくは運営基金のための担保の承諾の際に役立つことができた。

E− 社会的経済の存在を認知するであろうドキュメントがいたるところで生ずること、そして対応する法的枠組み、異なる経済形態、サービスする協同組合・相互保険機関・アソシエーション・財団の組織化の自由を保護する法的枠組みがあらゆる国で作られることを一緒に見ることが必要である。社会的経済団体の現代性・工夫を示す可能性は、この国際会議の重要な特徴であった。かくして、EU加盟国およびEU拡大の加盟候補国の双方に、我々の団体によって生まれる共同体政策への貢献の現実的承認を指揮すべきものであることは、欧州条約を納得させる必要性がある。それは市民の拡大と期待の経過に関して条約の改正を巧みに処理することである。

F− 国内法制の整備は文字通り優先課題と考えられる。競争分野での将来の共同体法変更に向けた準備は、社会的経済団体が立ち向かう限定的効力をもってあらゆる種類の差別を防がなくてはならない。これらの団体は未だ、集中強化の段階における経済的自由の必然的要素としては容認されていないのである。グローバル化の過程によって、商業会社の発展は社会的経済の事業体の害となる。そして、衡平の原則を確立することに注意を払う必要がある。

G− 社会的経済はできる限りヨーロッパ諸国の政府および共同体各機関双方から認知されることを求める必要がある。そしてまた、できる限り、社会的経済の運動内における広範な交流と、当然のこととして、立法指令および法律の準備への社会的経済団体の可能な限りの参画が望まれる。

 欧州委員会委員長Mr. Romano Prodi氏は、以下のように語った。協同組合は「利益を上げることができること、革新的であり競争力があること、そして同時に、社会目的や生活環境に関する必要条件の普遍的な性格を追求できることを明白に示している。」

 閉会の際、会議は、社会的経済の領域で積極的な運動のために共通し、且つその認知の向上のための基本的必要条件であるすべてのポイントを列挙した。認知は、共同体の目標に調和し、それ故に現実化を支援する、その役割、目的、独創力によって実証される。

− ヨーロッパと社会的経済運動にとって、拡大はチャンスである。
− 改正準備によって、欧州条約はヨーロッパの経済的社会的モデルを保護しなければならない。
− あらゆる法形態における事業の自由の認知。
− 正に社会的経済団体が行う公益サービスによって果たされる役割の承認。
− 社会的経済の運動の一国レベル、共同体レベル双方における公式な協定への参加。
− 社会的経済の若き支持者達の独創力への支援。
− 中・東欧諸国における、社会的経済の事業体のための開発基金の形成。この基金は共同体各機関の支援プログラムの構成要素となろう。
− 適合した加盟候補国の経済構造基金利用

 会議は、社会的経済がEUによって明言されたような価値を提供することによって、ヨーロッパの建設に貢献できることを証明した。

 二つの一般セッションの外、会議は各分科会に別れ、社会的経済セクターの様々な団体の代表によってコーディネートされた固有の課題に専念した。

A1分科会
拡大ヨーロッパにおける社会的経済の事業体の形成

分科会の結論:

 社会的経済セクターは、新しい高品位製品、財・サービスの生産・流通の新しい編成方法、生産業者間の新しい関係を提案する。社会的経済セクターは、新しい市場関係を創出し、新しい企業法形態に貢献する。社会的経済の領域の事業は、19世紀中に現れた市場と国家の沈下への力強い回答になっている。それはまた、経済のグローバル化の過程への回答でもあり、民主的参加とマネジメント、情報の透明性、意見や価値の多元性、社会および環境のための強力な社会的責任を現実のものにする。

 分科会の中で、中・東欧諸国における社会的経済セクター団体の共通の特徴が明らかにされた。第一に、社会的経済団体の発達にとって都合の悪い環境、公共機関当局の部局からのより良い理解と容認に向けた協同組合の緩やかな発展。第二に、協同組合に関する限り、民営化過程の実現のために利用される方法は、協同組合のイメージを傷つけると見える。それは人々が社会的経済の活動に積極的に参加するのを止めるような状態に帰着するものである。第三に、各国政府機関は、「より永続性のある」目的および各国の生活条件向上を助けることのできる経済活動を探求する人道主義と民主化の目標から少し離れた。

 分科会は、すべての事業領域と公共セクターの枠組みにおける優先事項として、社会目的を再統合し支援する必要性に見通しを立てた。例えば、幾つかの国では、国の発展に関連した戦略文書に協同組合は含まれていなかった。

A2分科会
協同組合と参加型企業の進展、東西の社会的パートナーシップ。SCOPEモデル

分科会の結論:

 PHAREプログラム−−事業支援プログラム−−に包括されるSCOPEプロジェクトは、達成目標を、中・東欧の10の加盟候補国に関係する協同組合生産団体、社会的協同組合および企業の設立と強化においてきたプロジェクトである。これはそれらの国間のネットワーク創出支援、そして欧州統合の力強い過程の構成をなす国内経済への包摂を通じてである。このプロジェクトはその活動を、もしシステムの現実性を保証しようとするなら、すべての関わる団体によって尊重されるべき五つの柱に集中した。

1. 代表性
2. 事業に対するサービス支援
3. 人的資源の開発
4. 内部監視と自己評価
5. 知識複合体の創出とその更なる利用

 このプロジェクト達成の全般的成果は以下のポイントに総括される。

第一:新しい協同組合法制化は、バルト三国において生まれた。他の国では新しい法制化の動きが見える。

第二:議会、政府、労働省、地方自治体機関との公式の接触が、すべての加盟候補国で確立した。

第三:経験の移転を可能にするプロジェクトが、最良政策に関する幾つかの研究成果を公表した。

第四:重要な業務が、欧州委員会と接触した領域で働いた。欧州委員会の文書はたくさん翻訳され、広まった。中・東欧諸国からのプロジェクトパートナーは広く、これらの文書の審議や修正過程に参加した。

第五:東西レベルに現れたパートナーシップは、パートナー団体間の日常の接触が起きた限りにおいて、すなわち情報技術の使用で、日常生活の中に統合された。

 このプロジェクトの一つの成果は、プロジェクトが将来のSCOPE2プロジェクトに向けた着実な基金を生んだという事実である。SCOPE2は今日、欧州委員会によって承認されていて、2003-2004年にそのコースを採るべきである。かくして、既に10ヶ国中8ヶ国がEU加盟国になるべき時に、その終了を迎える。

A3分科会
加盟候補国における社会的経済の財政手段の開発

 分科会の結論:

 分科会の期間中、以下の運営手続きが提示された。それは次の時代に実現されるべきものである。

− EU諸国および中・東欧諸国−−加盟候補国向けの例にかなう−−の最良政策の仕上げを続行する。その上、様々な金融機関の税制と法制の側面についての詳細な研究がなされるべきである。
− 協同組合銀行、信用組合、マイクロ金融機関も加盟候補国の銀行に関した法制度に含まれるという目的で、圧力が発揮されるべきである。
− 作業部会が形成されるべきである。それには欧州委員会副委員長が代表となって、既存の財政手段を基礎にして、社会的経済の事業体の財政手段の開発の可能性を探るものである。
− 結合(相互)手段は、中・東欧諸国における社会的経済の事業体の資金調達のために創立されるべきである。存在しているかもしくはその後に設立された事業体に関連するこの手段は、ここのケース、ニーズ、地方の条例に依存し、運営基金もしくは基礎的資本のために提供される保証形態に介入するために利用されるであろう開発基金の形態を採るかも知れない。

A5分科会
社会結合、社会統合、そして仕事の創出

 分科会の結論:

 分科会は社会的経済が活動する三つの領域を思い起こした。すなわち、人々と財産の保護、社会結合、そして社会統合である。さらに、分科会は、統合政策が積極的な貢献をもたらすことのできる領域を明記した:
− 全人口に対する雇用率の向上;
− 旧来の雇用市場から排斥された人々に合った新しい技能の開発;
− 創造的な力を支援することによって、個々人が能力開発のための機会の提供を受ける。

 分科会は以下のことを強調した:
− 地方レベルで雇用を支援し、社会的・専門的統合を多少なりとも解決する目的で、様々な利害関係を持つ人々を巻き込むことが必要であること。
− 社会的困難は、排斥された人々が直面しているものとして考慮されるべきであること。
− 人々の長期(恒久的)排斥のすべてのケースが列挙されるべきであること。
− 人々の素質(能力)は、統合の腕試しのために許されるものとして考慮されるべきであること。
− 原資の「相互化」に向けての協力が発展すること。

 この作業中、分科会参加者はリスボン会議の結果と行動を共にした。それによれば、今後二年ごとに、すべての国は以下の四つの目標を含む自らの国の計画を提出しなければならない:
− 雇用促進活用の簡便化
− 排斥リスクの予防
− 最も傷つきやすい人たちへの援助
− すべての関係当局の動員

 したがって、以下のことが必要である:

− 社会的経済を認知すること、将来の欧州憲法において基本的権利を含むこと。社会政策課題に関する討議の重要性を考慮するために自国の代表を動員すること。
− 社会的経済の価値の伝達を成功させるために、労働組合、地方連合体との強力なパートナーシップを探ること。
− 意思決定者は社会政策に責任を持つ政府であることを忘れないこと。かくして、社会的経済の役割を果たして活動する者は、その経験を特に全国的な活動の枠組みで政府に見せなければならない。

A6分科会
社会対話、相互的参加型社会保障

分科会の結論:

 ヨーロッパおよびその他の世界において、社会対話および社会保護のシステムは、経済、人口、自然、政治の諸要素が複合した結果である危機の中にあると見出される。主に新自由主義的な公共支出の制限、公共サービスの解体によって惹起されたこの危機の深さは、失業統計、条件もしくは平等性の劣化、社会的排斥、等々の手段を用いて計られる。

 社会対話、合意条件、パートナー間交渉のルールを明確に定めるには、十分な法的枠組みが必要であり、この枠組みは、代表の明白な基準によって明らかになる。枠組みはまた、欧州レベルで創られるべきであり、社会的経済はその中に居場所を見出さなければならない。

 社会保護に関して社会対話は、共通利益を満足させる中に目標を持たなければならない。社会的経済団体、特に相互保険機関は、拡大する社会保護の商業化に反対する位置に立っている。それは必然的に、該当する需要の支払い能力の高低に依存する現ニーズに個別に応えることに導く。それらは、リスクと原資づくりの相互受入に基づく連帯補完的なシステムを保存・創出する可能性を創り上げる。これらのシステムは国毎にそれぞれの法形態、組織形態を持つであろう。唯一の共通した特徴は、非営利性と民主的マネジメントである。

 社会保護に注ぎ込む公共予算が実際の政治的経済的目標を創り上げている状態に到達するために、社会的経済団体および労働組合は、政府に対して共同して立場を明らかにする意志を持っている。ハイグレードな社会保護に必要なことは、公共サービスの保護との不可分性である。社会的経済団体および労働組合は、次の質問に答えを出さなければならない。グローバル化した世界において、また、唯法律、利益の法だけの外皮ですべてのことをカバーしようとしている金融システムの経済において、社会保護とは何であるべきか?

A7分科会
首尾一貫した開発、地方自治体と社会的経済とのパートナーシップ

分科会の結論:

 この分科会の成果は、いわゆるプラハ宣言の成立を導いた。それは社会的経済の普及に関する会議の公式文書となった。

 中・東欧の地プラハにて2002年10月24日-25日開催された社会的経済に関する第1回会議と関連して引き出された
「プラハ宣言」

 「古いヨーロッパ」における社会的経済の普及に関連して、決定的・歴史的瞬間が来た。この大きな民主主義のチャレンジは、参加者として市民として関係する数百万のヨーロッパ人を巻き込んでいる。成功を得るために、欧州条約は同じ基盤の上に(上から下向きに)、またすべての地域領土の発展(上向きに)の上に築かれなくてはならない。

 社会的経済の役割を果たして活動する者および代表がプラハに参集した地方の各級自治体は、「プラハ宣言」への署名を決定した。宣言は地域のパートナーシップの枠組みにおける共通の任務を明確にし、またすべてのレベルでの開発戦略の筋書きを提示している。それは、欧州連合や将来の加盟各国の住民の生活水準の改善・向上を達成するための、我々の積極的関与を表明している。

1.地域レベルでの社会的経済の任務
1.1 社会的経済団体は、地域の市民社会によって活用され、経済的・社会的現実の様々な問題を解決するための基礎的な道具・手段である。
1.2 経済場面で活動する者としての社会的経済団体とは、地域の価値、民主主義と雇用を創造する者を言う。
1.3 経済場面で活動する者としての社会的経済団体は、社会的に不利な立場のグループの統合過程において、またいわゆる地域社会資本の創造と強化において、鍵となる役割を果たす。
1.4 社会的経済は多くの国で、区域の社会結合の鍵となる要素として認知されている。

2.各級地方自治体の任務
2.1 選出された各級地方議員の第一義的任務は地方の現実のニーズに応えるものであるが、彼ら議員は市民向け情報の最初のポイントと考えられる。
2.2 各級地方自治体は、様々な見地から関連する区域の生活の中心をなす活動をする。
2.3 各級地方自治体は経済活動や雇用の触媒として活動する。それ自身、雇用者であり、地域情報の具備者であり、情報収集の提供者であるが、地域コミュニティのすべての人々に対するサービス提供者である。地方自治体はコミュニティの代表でもあり、地域開発やパートナーシップの再生におけるキーとなる活動家でもある。
2.4 それに加えて、公共行政機関の各級地方自治体は、ヘルスケア、文化、雇用、教育、住宅などを含む様々な領域で、地方基準に沿った支援の責任がある。

3.地域開発へのパートナーシップの貢献
3.1 社会的経済の事業体は、地域開発戦略の枠内において、また新しい地域の多元的幸福の創造において、地方自治体の重要なパートナーである。しかしながら、これは「フェアプレイ」原理の適用を、一方では地方自治体の部局もしくは旧来の商業分野からそらすものではなく、他方では公平な方法で地域開発戦略の実現の際に競争する社会的経済を避けるものでもない。何よりも社会的経済こそが、旧来の市場の事業活動によっては、また政府によっては提供されない社会的な財やサービスの提供において、空白を埋めることができるのである。
3.2 社会的経済、民間営利セクター、公共セクター間のパートナーシップは、社会結合、社会資本の創出、参加、雇用、地域レベルの企業の設立等に貢献する。
3.3 パートナーシップは、価値を社会の信頼や信念、市民・社会の参加によって、地域開発や社会発展の過程に移転させる。より高い社会結合によって外部社会もしくは端の人々を統合する(例えば、移民、長期失業者)。
3.4 パートナーシップは、受け身の社会保障や雇用者特典給付システムを、持続的発展における積極的な社会投資に変換させるのに役立たせることができる。
3.5 パートナーシップは、パートナー間の相互尊敬、率直性、透明性をもって行動する。それは地域のニーズや将来性の具体的情報を基礎にしている。それに加えて、「地球規模の思考と地域規模での行動」の原理は、発展の調和的ビジョンの条件である。

4.より強力なパートナーシップの構築
 EU諸国と加盟候補諸国の、各級地方自治体と社会的経済の事業体のパートナーシップは:

4.1 共通の戦略を開発するべきであり、
4.2 新欧州ロジェクトでの特有の指示の提供形態において、したがって加盟候補国との対話の強化を容易にするために、普及、様々な方法の試行、最良政策の交流を支援するべきであり、
4.3 地方レベル、一国レベル、国際レベルにおける様々な地域パートナーシップ間の相互連携を強化するべきであり、
4.4 地方自治体と社会的経済との新しいパートナーシップの確立を助けるために、かくして市民のニーズの基準となっている人たちの意志をつなぐ能力のあるモデルを普及するために行動を起こすべきであり、
4.5 専門的センターと見なされるべきであり、地域レベルに影響を与えるすべてのEU、各国政策に関して相談されるべきであり、
4.6 「マネジメント・ツール」の基準要素としてパートナーシップを採用すべきであり、
4.7 新しい欧州の創造において、特に代表的機関や団体、相互連携を通じて相談されるべきであり、
4.8 最も低いレベルにおいて、共同体法の普及において明白な役割を果たすべきである。

5.欧州連合と各国政府の政策および原資
 欧州連合、特に欧州委員会、および各国政府は以下のことを通じて、この宣言の行動を実行するこの努力を認知し支援することが求められる。

5.1 社会的経済や地域発展の実践から最良事例のデータベースを確立;
5.2 地域パートナーシップの経済的・社会的原理や社会的経済の企業を含んだ教育プランの創造;
5.3 機関を跨る作業部会の設立。その作業部会は、経済構造基金における高い柔軟性の達成への方法を分析するであろう、また、社会的経済と各級地方自治体とのパートナーシップを基礎にした特定区域の地域開発支援に特別の注意を払うであろう;
5.4 最良政策や相互連携の交流を目的とした定期的なヨーロッパの集まりの組織化;
5.5 EU財源の実質部分(例えばEQUAL(2003-2006)融資の次の一期)の、社会的経済、パートナーシップと地域開発についてのノウハウの交流への、またEUと加入後に抱負のある国々の地域パートナー間のヨーロッパ問題についての交渉への方向付け;
5.6 社会的経済のベストプロジェクトやベストパートナーシップに対する年間表彰の形で、成功している地域パートナーシップが良く見えるように支援。

 この発議は、社会的経済に関する別の欧州会議で採択された結論の、また各級地方自治体と社会的経済団体間のパートナーシップに関するEU地域委員会の最近の構想の続編である。

 数多くの区域で固有の特徴と当初の代表的役割を伴った地域委員会およびREVESネットワーク(R_seau Europ_en de Villes & R_gions de l'_conomie Sociale:社会的経済のための都市と地域の全欧ネットワーク)は、このプロセスの今後の発展の援助者として振る舞わんことを願う。

 現宣言はプラハでの社会的経済に関する会議の全体会議で承諾され、五年の期間を見ることになった。実践的・政治的範囲で更なる発展の達成経過と促進の評価のために、定期的に監視されることになる。

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「協同の發見」2003年5月号収録


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