「21世紀の協同の構図」
(体験的協同論:私の21世紀ビジョン、ラフスケッチ)より

1999.03.20       
大学生協連  岡安喜三郎

【21世紀の協同の構図】

 日本の21世紀の協同の構図を、私なりに描いてみたい。端的に言えば以下のようなものが出発点になるのではないか。
1.協同の21世紀を実現する「コミュニティベースの“協同”」
2.協同組合の青年を舞台に登場させる「協同組合青年フォーラム」
3.多様な協同組合の存立、その保証とリーダーシップ

1.協同の21世紀を実現する「コミュニティベースの“協同”」

 おそらく、「コミュニティベースの“協同”」は、協同の21世紀を実現する際の中軸となるに違いない。
 コミュニティベースの幅広い協同に関するネットワーク組織(仮にNOC(注1)とする)は、地方自治体の協力を得て、NPOも含めたあらゆる協同の活動を支援する。とくに結成を支援する(注2)ことになろう。
 また、NOCは、コミュニティベースにおいて、ICAの協同組合原則に書かれている「協同組合は、一般の人々、特に若い人々やオピニオンリーダーに、協 同組合運動の特質と利点について知らせる」(ICA第5原則「教育、訓練および広報」より)という活動(注3)の主要な担い手となろう。
 個別々々の生協の活動を通じて「協同組合の価値」を組合員に浸透させることももちろん大切ではあるが、国際標準の協同組合の声明を、地域全体を見渡し て、その地域の「一般の人々、特に若い人々やオピニオンリーダー」に知らせることは、もっと大きな可能性を生み出すに違いない。このような活動に生活協同 組合が積極的に関与するする構図こそ21世紀のイメージでもある。
 このようなNOCが全国に作られれば、それらの活動を支援するものとしての全国協議会ないし連絡会が必要になる。主体はあくまでもコミュニティベースであるが、コミュニティとコミュニティを結ぶ機能を持つ。

(注1) NOC:Network on Co-operationの単なる略。
(注2) 北イタリアの経験(10人の青年が集まって事業を起こしたいなら自治体が一定額の資金の貸し出しを行う制度)も研究対象となるかも知れない。
(注3) 実践的に言えば、NOCの設立に関わらず、今すぐにでも「協同組合のアイデンティティに関する宣言」(1995年ICA総会)――それは協同組合の定義、 価値、原則を謳っている――をコミュニティに浸透させることが課題であろう。NPOの運営手法にとっても協同組合手法は十分に参考になるはずである。い や、活用してもらいたいとも思う。

2.協同組合の青年を舞台に登場させる「協同組合青年フォーラム」

  「協同組合青年フォーラム」プランは、日本のあらゆる協同組合セクターを対象に、青年の情報交換、交流等をすすめる全国ネットワーク組織を結成しようとい うものである。前述したアジアの青年セミナー開催だけではなく、南北アメリカでの「青年協同組合人の大陸準備会議(注4)」として世界のいくつかに青年に 焦点を定めた取り組みが進みつつあることも念頭にはある。これら世界の青年の動きには、ICAの大会毎に開催されてきたユースセミナー(注5)が影響を及 ぼしているとも言える。
 「若者に支持されない組織・運動に未来はない」とは肝に銘ずる言葉である。青年が支持する組織とは、青年が参加する組織であるし、常に青年の登場する舞台を設定できる組織であろう。
 単純には言えないが、村おこしは農村では農協青年部が、街おこしは商店街の「青年」が奮闘している話をよく聞く。大学生協は学生がメンバーで、組織活動 も活発である限り、青年は見えるし、登場する舞台もたくさん作ることが可能である。農村の青年も、商店街の青年も、自らの仕事を持って地域おこしをすすめ ている。となると、若い生協職員の地域おこし活動への参加も、あながち荒唐無稽ということでもなさそうである。
 いずれにしても、このような活動を鼓舞し支援するための全国規模での「協同組合青年フォーラム」は有効であると思われる。「若者は国の宝である」との堅い信念を持って、青年が様々な舞台に登場することを支援したいものである。

(注4) 1997年11月19-21日、青年協同組合人の大陸準備会議がメキシコで開催され16ヶ国から参加した。会議は“第3千年期は我々のもの”と謳いあげた“21世紀の出発点についての青年宣言”を採択した。
(注5) 1988年ストックホルム大会時に現地実行委員会の提案が始まり。1992年の東京大会時は、全国大学生協連がホストを引き継ぎ、1995年マンチェスター大会へと続き、1999年モントリオール大会時も開催予定。

3.多様な協同組合の存立、その保証とリーダーシップ

  協同組合の多様性の保証こそ協同組合が協同を担う基盤である。生協法とか農協法とか協同組合の個別法しかない日本の方が国際的には特殊なのだろう。国際活 動を経験して、協同組合は実に多様であることを実感した。この多様性こそが、協同の21世紀をイメージできる源泉だと言える。
 協同組合の多様性を保証するには、それなりの法律があると一見分かりやすいが、必ずしもそれを前提にする必要はない。運動の発展、実践の展開に応じて法 律が後から作られることはよくあることである。では、実践的に、協同組合の多様性を保証する武器はなにか? 逆に、協同組合と他とを区別する基準は何か?  結局のところ、これがここ十数年以上にわたって全世界で論議され、1995年に採択された「協同組合のアイデンティティに関するICAの宣言(定義、価 値、原則)」ということになろう。少なくともベースにはなる。労働者協同組合法の制定運動はこのことを教えている。
 したがって、「協同組合のアイデンティティに関するICAの宣言」を、組合員の共通の財産にすることはもとより、積極的に広く国民、在留外国人に浸透さ せることは、協同組合や組合員のためだけではなく、今後の社会のため、コミュニティのためにも必要なことと思われる。
 こういう協同組合の多様性と、協同組合のアイデンティティの浸透した社会の中で、協同のリーダーシップをとる協同組合こそがさらに発展することができる。