アジア青年のHRDP(人的資源開発計画)の可能性
〜アジア太平洋地域の協同組合の発展に向けて(ラフ・スケッチ)〜
1996.02.21 岡安喜三郎
1.この間のアジア太平洋での国際活動から
●留意してきたこと
・日本の大学生協の活動を紹介し、その国のアクションプランに生かしてもらう。
大学生協紹介セミナーシリーズ(参加/連帯/人的資源/地域生協との関係)
・そのアクションプランとの接点を見いだし、具体的協力に入る。
・貿易やマネジメント問題には具体的に入らない。
●セミナー等での私たちの主張
・「(学生の)参加なしには、(大学)生協運動の成功はありえない」
さまざまな事情により、学生が組合員になってない生協が多い。
・「店舗の利用者は、組合員に迎え入れるべきである」
上記も原因であるが、利益還元の取り分からメンバーを増やさない傾向あり。
・「若者に支持されない組織は、衰退の道を歩むのみである」
別の言葉では「若者に支持されない運動に未来はない」
●アジア太平洋大学生協委員会の発足(生協委員会の小委員会として)
・発足時、スクール・コープも入れることとなった(日本の学校生協は一応別)
・一方で、アジア太平洋生協委員会の不活性状態(競争状態に活路なし)
・大学生協の人的資源の活用が焦眉の課題
2.アジアとの協力活動で得た、注目すべき日本側の成果/その基盤
●日本の大学生協運動の創生期の苦労の「追体験」で視野が画期的に拡大する。
・もはや、生協職員も学生・教職員も日本では、なかなか体験できない
・追体験すれば、結局「なぜ自分は生協にいるか」がより鮮明になるのである。
・新しいことにチャレンジする精神がつくのも見逃せない。
●日本の生協運動の特性、大切にすべき点が実感できる
・利用者を組合員に→「員外利用問題」→組合員の生活からの政策
・教職員と学生→大学コミュニティへの関与→コミュニティづくり、勉学教育事業etc.
・
●これらの成果の基盤は、大学という共通基盤にある。いわば「社会の上澄み」でもある
・基盤の強みでもあるが、ここに甘んじていたら「社会との関わり」が甘くなる。
・各国での大学生協のリソースと社会との関係にステップアップが求められる。
●地域生協関係は、相変わらず「経営と競合」という視野を脱しきれていない。
・各国の関心は「経営と競合」に収斂されるが、(∴)共通の取り組みの力にならない
・もっとも大きな問題は、社会・コミュニティへの関与のなさである。存在意義。
・本来、抜本的なビジョン構築が求められていると思われる。
3.アジアにおける『青年の就業、子供の修学』にコミットできないか
●アジア地域は大学生協よりも、高校などのスクール・コープが沢山ある
・タイ、マレーシア、シンガポール、スリランカ、ミャンマーetc.
・そのスクール・コープを巻き込むのが各国生協連指導部の関心事
→96年11月のシンガポールセミナーはスクール・コープも含まれる予定
・スクール・コープの位置づけは、教育的価値があることと思われる
→スクール・コープの場合は、生徒もメンバーである。理事にもなる。
●フィリピンのセブ島で行われた「協同組合の青年カンファレンス」に姫野君参加
・ICA大会時のユース・セミナーのアジア版とも見ることができる。
・ただし、テーマは極めてアジア的であり、実践的である。
トピック1:「若者のリーダーシップ開発」
トピック2:「若者の起業家精神の開発」
トピック3:「協同組合における未来の仕事」
トピック4:「若者に対するマーケティング、十代、十代前含む計画」
トピック5:「協同組合の発展」
トピック6:「組織づくり」
●『協同組合における仕事興し』は協同組合の原点的活動でもある
・初中等教育を退学した子供のための協同組合の学校があるらしい(要調査)
・修学問題は、生活収入問題と連動している("Street Children")「収入得ながら勉強」
・その国の経済発展と協同組合による仕事興しは矛盾しないし、適合する。
●『アジアにおける青年の人的資源開発』のテーマは21世紀に向けた挑戦課題
・青年層の就業問題(失業率減少)が、アジアの共通テーマと思われる(?)
・これができれば、21世紀の協同組合はこころわくわく
・北イタリアのはなし(「若者9人集まれば行政が資金援助」という制度)参考になる
●じつは、これはアジアへの一方的支援ではない。
前記2に述べたように、必ずわれわれ日本の生協運動にも良い影響を与える。日本にだって、いじめの問題、中退問題など、コミュニティへの関与として重要な
ものがある。生協が、もし、社会の「上澄み」の組織構造を持っているなら、いじめの問題、中退問題など、いわゆる社会での最重要関心事への関与を通じた、真のコミュニティへの貢献はできない。
・21世紀を展望すれば、日本の中でこれができなければ、単なる事業団体という組合員の印象は、現実の位置になるだけであろう。
・生協が利益を出す意味も、理事にとってもっとすっきりする。
4.挑戦課題である意味
1) ICAの新宣言のなかの第7原則「コミュニティへの関与」
・コミュニティの最も重大な関心事に関与できるか
・日本の「教育」問題。アジアの国の貧困問題
2) 生協のソサイエティ的側面の見直しがでてくるであろう
・生協の設立基盤/現在的見直し
・(賀川豊彦:セツル的要素):コミュニティ形成の要素を潜在的に持っている
・(一定の収入のあった職域から):無意識の「上澄み」から脱皮するための方策
・(戦後の配給制度の受け皿として):ほとんど消滅。
3) 生協のコミュニティへの関与はネットワークが必要になる(特に貢献となった場合)
・「生協で全て行う」という方式は、発想の貧困をまねく。21世紀にはもたない。大学生協は教育面でで貢献できる。仕事興しは労働者協同組合など、「もちはもち屋」のネットワーク。
・「貧困からの脱出は教育」と言われる。その国の大学生協が"Street Children"等で関心をもてば、協同組合ネットワークでかつての日本の「セツル」活動スタイルが可能である。
・その国の協同組合指導者が、どの程度の関心を持っているかによるが。
・タイプ別協同組合間協同は、経済問題だけでなく、文化として形成するビジョンを
4) 再度、「コミュニティにある共通した最も重要な関心事への関与」。これが生協の社会的位置を変える。
・少なくとも、自分の生活のためだけではない関与(一般に、商品は自分や家族のためにという側面は否定できない)
・コト、文化(助け合いなども含む)
5.具体的には、何をするのか
(まさに試案です)
1) ICAアジア太平洋支局によるリージョナルセミナー『アジアにおける青年の人的資源開発』を2000年までに、1回ないし2回開催する。
・あらゆるタイプの協同組合が関与し、青年リーダーの育成。
・仕事興しの方法。などなど (実は青年だけではないのだが<女性の自立>とか)
2) 各タイプ別委員会(生協は生協委員会)で、上記テーマを、議題として論議する。
・まずは調査であろう。
・他の委員会等との合同会議を開催する。→リージョナルセミナーへ
3) 日本においても、『アジアにおける青年の人的資源開発』をテーマにした協同組合間のプロジェクトを結成する。(JJCのもとに)
・ボランティアの受け皿にもなる
・これなら、ODAの資金も可能?
・日本の現実にコミットする協同組合の姿がでてきそう。
4) 大学生協としての資金は、50万円〜100万円/年かな?(50万くらいが妥当)
☆ とりあえず、どこから話をはじめるべきか?
第1段は、ICAROAPヘラート氏、山内氏、日生協国際部、全国大学生協連国際部、そして私とで話をしました。(1996年2月20日)
その上に立って、全国大学生協連常勤役員会(部内会議)を経て、(岡安個人の責任)で起草したものです。
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