概 括
ICA(国際協同組合同盟)ソウル総会・青年セミナー(地域セミナーと区別するため以下グローバル青年セミナーと呼ぶ)は10月13日から17日にかけて、15ヶ国から35人の青年含め50人の参加で開催された。日本は大学生協連、全労済、労協連から7名の青年、協同組合経営研究所、新聞連、大学生協連等から、傍聴、取材参加であった。
セミナー開会にあたって韓国農協連合会(NACF)のチュル・シンジャ副会長が歓迎の挨拶をのべ、その後、ICAロドリゲス会長が青年への期待を述べた。第一に,決して体験を恐れず、それを大切にする。経験はまさに失敗の蓄積なのだ。第二に,人生は短い、失敗を恐れてはいけない。私たちはより良き世界を作り上げる意味のある人生を送ろう。また会長は、すべての協同組合は青年の組織もしくは部会を持つべきであり,少なくとも一人の若い人を理事会メンバーに選ぶべきである、皆さんが賛成すればこの後の総会に提案しても良い、と述べた。(もっとも、この提案にはセミナー最終日(17日)に「ICA理事会に1名の青年理事枠を設定する」追加案がICA本部から出され、紛糾議題――未消化――になってしまった。)
基調講演はイギリスのピーター・デービス博士が行った。博士の要点は以下の通り。現実に押し流されてはいけない、そして青年を活性化するには、仕事に対する決断と忍耐が必要である。そして、第一歩はこの二つの方向からもたらさなければならない。今日,若い人たちは高度な個人主義社会の中にいる。そして、若者は、協同組合の価値観を変える若者文化形成者の一員にならなければならない。
この青年セミナーに対する主催者の狙いに、青年協同組合および既存の協同組合における青年の参画の機会の比較検討することがあった関係で、昼食後は、ICA調査委員会との共同ワークショップが開かれた。マレーシアからは大学以外にも高校などに多数の協同組合があり,生徒が運営していること、韓国からは大学生協の紹介、環境などの取り組みを進めていること等々が報告された。ICA調査委員会委員長のロジャー・スピア教授は知の交流のような協同組合モデルを比較する価値を指摘した。
その後,3つの小さな分散会――食の安全、オンライン金融サービス、サービス協同組合――が行われた。それぞれの討議結果は17日に行われたICA総会3つのビジネスフォーラム――食の安全、オンライン金融サービス、サービス協同組合――において青年代表が発表した。
グローバル青年セミナー小史
初めてのICAグローバル青年セミナーは1988年のICAストックホルム大会に併せ、「平和と軍縮」のテーマで開催された。その前年、スウェーデン協同組合研究所から一通の招待状がJJC(日本協同組合連絡協議会)、日本生協連経由で大学生協連に届いたことから、それへの参加が決まる。大学生協連は学生常務理事1名を派遣した。このセミナーには、国連のデクレアル事務総長(当時)が現れ、参加した青年たちを励ました。参加した青年たちは「今後連絡し合おう」と確認し、散会した。
第2回目は1992年のICA東京大会時に、大学生協連がホストとなり、「平和と環境」のテーマで広島から京都、東京と会場を移して開催された。当然、日本の参加者も大学生協だけではなく、様々な協同組合から青年が参加した。このときは特に「第2回目を開く」という話が事前にあったわけではない。ストックホルムに学生を派遣した関係もあり、東京大会時にストックホルムのように青年のセミナーを開こうとの機運が大学生協内部からもちあがり、ホストであるJJCの確認を経て開催することになったものである。大会全体会では青年セミナー参加者の代表がセミナー報告を行った。
1995年のICA大会はICA設立100周年記念としてイギリス・マンチェスターで開催されたが、もはやICA大会時に青年セミナーを併催するものという「慣行」ができつつあった。大学生協連も東京でのグローバル青年セミナーを主催したものとして、「第3回目」の開催をイギリスに要望してあった。第3回目は協同組合カレッジがホストとなり「青年とメディア」のテーマで開催された。
第1回から第3回まではICA大会開催国からの自主運営的な開催提案であり、「国内滞在費ホスト負担」で開催されている。
1999年のICA大会は、デジャルダン信用協同組合創立100周年記念としてカナダ・ケベックで開催され、セミナーもカナダからの開催提案によって「協同組合に価値を付加する:新千年紀における青年の参画」のテーマで引き続き開催された。このセミナーでは参加した青年のICA大会への傍聴を可能にした。ただし、参加費用は自己負担ベースとなり、参加費・宿泊代も負担することとなった。これが通算4回目のグローバル青年セミナーということになる。このときの総会で、ICA会長からICA理事会の下に「青年委員会」を設置することが提案された。
その後、ICA理事会は「青年委員会」の案を「ICA青年ネットワーク」設立へと変更し、その準備をすすめ、各地域事務局に青年コーディネータを置いて今回のソウル総会青年セミナーを迎えた。セミナーは「青年のコミットメントを通じて協同組合を促進する」のテーマで開催された。それが冒頭の紹介である。ついでに言えば、今回のグローバル青年セミナーはICA本部が企画に参加したセミナーでもあった。
ICA青年ネットワーク構築に関して
この間、私自身がICAアジア太平洋地域の青年セミナーに関わり、グローバル青年セミナーを見てきた立場から、ICA青年ネットワーク構築に関して簡単に経緯を記しておく。
この件に関しては昨年(2000年)、ICA地域青年・キャンパスセミナーを主催してきていたICAアジア太平洋地域大学生協委員会や生協委員会・大学生協委員会合同三役会議で議論してきた。これらの会議においては、「青年委員会」設置は提案としては魅力あるがはっきり言って時期尚早であり、実態無き組織になりかねないと意見がまとまり、同時に今必要なのは、国内でのオール協同組合の青年の交流活動であり、地域内での交流・セミナーの活発化であると、ICAアジア太平洋地域事務局長を通じてICA本部に伝えた。これは日本において「協同組合青年フォーラムを開こう」という機運と、ICAアジア太平洋地域青年セミナー(東京、2001年6月)準備の中での話であった。
ソウルでグローバル青年セミナーを開始した翌日の14日、ICAの5地域の青年コーディネータ、ICA青年担当理事(メルコーネ女史・イタリア)、ICA本部青年担当、いくつかの協同組合(日本、シンガポール、フィリピン、スウェーデンなど)が参加して、「ICA地域青年コーディネータ会議」が開催された。これは「青年委員会」設置をめざしながらも、当面ネットワークを促進するために実践的に重要な会議である。
会議では次回ICA総会(2003年9月、オスロ)でのグローバル青年セミナー開催、特に青年の「選抜」資格が提案されたが、アジア太平洋地域からは「必要なのはグローバルセミナーの選抜基準論議ではなく各地域青年セミナーの開催計画であり、それが困難な地域にICA本部が援助することこそ重要。ICA青年セミナーは国内・地域活動の成果の上に各国が代表を出す方式」を逆提案した。
実はアジア太平洋地域以外では青年活動が進んでいなく、かつ他の地域コーディネータも初めてこの会議でアジア太平洋地域の青年活動を知ったというのが実情であった。ヨーロッパ地域事務局の女性も率直にそのような感想を漏らしている。ヨーロッパも次回地域総会(2003年)で青年の企画を検討中とのことである。「地道な積み上げは地域から」が大道ということになろう。
協同組合で行う青年セミナーは、「教え込む」ことではなく、ましてや「大人の美学で青年の思想を彫刻する」ものでもない。青年自身が協同組合に持っている関心事、思いを青年同士で交流しながら、青年自身で協同組合の未来を担う気概を醸成することが重要なポイントである。その中から協同のリーダーが生まれる。そのために必要な基礎情報、歴史――国内・地域・グローバルレベルの――はキチンと伝えなければならない。そして青年から発信された構想・ビジョンを理事会や所謂「大人」が受け止め、若者とのピア・ディスカッションが行えるようになったとき、青年の力がリーダーを通じて総体として協同組合の発展に生かされる。
ICA青年委員会発足までには、各地域での青年セミナー等、まだまだやるべきことがあり、同時にその際の発想の転換が必要である。
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