歴史を知り、その国を知る中で、
ともに発展する交流を


●多種多様な大学生協の形態

 アジアの大学生協は、ICA(国際協同組合同盟)アジア太平洋地域の生協委員会のサブ委員会として交流活動を続けています。大学生協と言ってもそれぞれの国の歴史的経緯から独特の組織形態を持っています。
 大学生協と言ってもそれぞれの国の歴史的経緯から独特の組織形態を持っています。
 国ごとに分けてみますと、

  1. 大学全構成員加入型主流の国
  2. 学生生協主流の国
  3. 教職員生協主流の国
  4. それらが国内で混在している国

に分けることができます。
 学生のみが組合員になっているのはインドネシアのコープ・マハシスワ(マハシスワは学生の意味)が典型的です。教職員中心なのはシンガポールの大学(総 合大学)とマレーシアです。マレーシアの大学生は、法律ないし行政指導で協同組合のマネジメント参加が認められていない(大学以外の学生・生徒は可)た め、コープ・クラブなどの形で大学生の組織化をすすめています。
 混在型のインドやフィリピンでも教職員の協同組合が多数でしたが、近年、学生も組合員とする大学生協への転換が模索されています。フィリピン大学では教職員生協とは別に学生生協を設立しました。
 タイは混在型です。伝統的なチュラロンコン大学生協は学生の組織で、教職員はアドバイザーとして関与しているだけですが、チェンマイ大学生協、スリナカリン大学(教員養成系)バンケン生協などは教職員と学生が組合員となっています。
 大学全構成員型の大学生協は日本と韓国です。日本でも歴史的には教職員生協も存在していましたし、大学生協も「学生生協から大学生協へ」という合い言葉を使った程に学生に偏った運営も存在していました。
 社会主義国ベトナムでは、ドイモイ(刷新)政策の進行にともない、新しい協同組合運動への脱皮を図るため、ベトナム協同組合連盟が大学生協セミナーを開始し、ハノイ国民経済大学で全構成員型の大学生協第一号が設立されました。

●アジアでの国際協力活動の特徴

 世界の協同組合の人たちと初めて会った時には、もう何年も前から知り合いであったかのような錯覚を覚えるくらい、協同組合の話に花が咲きます。「同じような目的を持った仲間」との感情が生まれるのだと思います。
 しかし、アジア、特に東アジアや東南アジアの国との交流には複雑な感情が交錯しています。日本への反感や深い心の傷を持った人たちも協同組合活動に携 わっています。あるフィリピンの人は交流し始めて三年後の九二年、京都を訪問し、大学生協の活動を自分の目で確かめ、初めて「この人たちは信用できると 思った」と、話をしてくれました。
 言葉だけではなく、過去、現在、未来を見すえた平和活動の実態、本当にアジアの人たちと友達になりたい気持ちがアジアでの協同組合の交流を支えていると思っています。
 アジアの大学生協どうしの交流の本格的化は、一九八九年タイから始まり数カ国で開催した「日本の大学生協紹介セミナー」シリーズと、一九九三年開始の「学生アジア・スタディ・ツアー」シリーズからです。
 交流は、日本の活動を伝えるためには自らを知る、伝えた後に自らが分かる(良さも問題点も含めて)その繰り返しでした。
 アジア諸国の大学生協、地域生協に比べれば日本の大学生協、地域生協は強大であり、「発展の先輩格」とも言える位置にあります。しかしセミナー等ではこれを、日本経済、社会インフラとの関連、生協の組織性格、目的性の絡みで説明する必要が生まれます。
 たとえば、店舗活動や商品活動、共同購入活動において、大枠で日本はアジアの中でも高い水準の国の一つです。しかしながら、これらの活動はその国の民度 や社会基盤に負うところが多く、これを無視したセミナー・技術交流は功を奏しません。このことは私たち自身が私たちの活動を、どう理解するかに関わりま す。
 国際交流の主要目的は、共に自国での(生活)協同組合の発展です。特に組合員活動や人材育成、連帯活動の発展をすすめる共通目標での交流と協力関係を強 化するところにあると思っています。アジアにおける国際活動においても、「励まし合い、学び合い」は必須です。

●二十一世紀のアジアの大学生協

 アジアの大学生協は九〇年代前半の「日本対アジア諸国」型の交流からネットワーク型への脱皮を図るため、一九九四年十二月ICAアジア大平洋大学生協サブ委員会を結成しました。同委員会は学生・青年を対象にした「キャンパス/青年セミナー」を二回開催してきました。
 一回目は一九九六年十一月シンガポールで開催(テーマ 今日の青年、明日のリーダー)、二回目は一九九九年四月フィリピンで開催(テーマ 未来のリー ダー、今をリードする)しました。ともに各国から学生を中心に百数十名が参集しました。もちろん、日本からも大学生協や地域生協の学生・青年が参加してい ます。
 前述したように、アジアの大学生協は学生の組織化をめぐって様々な形態が存在しているのですが、学生・青年が協同組合運動発展に果たす役割への期待には 共通したものがあると言えます。換言すれば、「若者に支持されない組織・運動に未来はない」という大学生協サブ委員会の共通認識が、青年セミナーを支えて います。
 二十一世紀のアジアの大学生協は、これらのセミナーで提言された内容にヒントがあると思われます。例えば、以下のようなことが発信されています。
○今後も二年に一回、アジア地域の青年セミナーを開く。国別も開催すべきである。
○「私たち青年は、協同組合運動の発展の大きな力でありたい」(青年版使命の宣言)
○国内・国際レベルで、青年に協同組合の理解が深まるような企画を実施する。
 参加者の多数は学生なのですが、これらの提言の中には、生協、農協とかの区別がありません。それぞれの国には、貧困克服、仕事興し、少子高齢化など、固 有の解決すべき課題があります。共通しているのは地域コミュニティベースであるということです。アジアの二十一世紀の大学生協は、それらに正面から関与す ることで新しい発展をもたらすと思います。

(全国大学生協連副会長理事 岡安喜三郎)


大学生協連発行「UNIV.CO-OP」1999年12月号収録

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