1999.08.27-09.01
「新しい世紀へ、挑戦する協同組合」
の姿が見えたICA大会・総会
【ICA大会出席・米カレッジストア訪問出張記】
1999.09.27 岡安喜三郎
栗木 敏文
今年8月末から9月にかけてICA(国際協同組合同盟)の総会がカナダ、ケベック市で開かれ、それに参加してきました。同行者は他に、学生常務理事萩原(ICA青年セミナー)です。
ICA大会/総会には大学生協連の3名の他に、日本生協連から竹本会長、田中副会長、伊藤専務、大森理事、加藤医療部会顧問以下11名が参加、全労済から勝倉専務以下3名、医療部会4名、コープこうべから12名が参加し、協同総研(労協)3名、農協等をふくめ、JJC(日本協同組合協議会)全体では約70名が参加したようです。ICA大会全体では80カ国1,055名の参加との報告がありました。
日程概要
8月 28日 |
(土) |
生協委員会会員会議 |
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29日 |
(日) |
青年フォーラム開始 |
青年フォーラム |
歓迎レセプション |
30日 |
(月) |
大会開会式 |
大会全体会 |
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31日 |
(火) |
大会ビジネスフォーラム |
大会全体会 |
別れの夕べ |
9月 1日 |
(水) |
大会全体会 |
ICA総会 |
青年フォーラム終了 |
です。以下順に報告します。
1. ICA大会開会式
2. ICA大会全体会
3. ICA大会「ビジネス・フォーラム」
4. ICA総会:「ICA 2005」(ICA組織自体のビジョン)
5. ICA生協委員会会員会議
6. 青年フォーラム
1. ICA大会開会式
開会式には、生協委員会会員会議に参加していなかったインドネシアKOPINDO(青年協同組合連合会)のイクバル氏、マレーシアのGAKUB(大学生協連合会)のカジス教授等も参加していました。彼らは共にアジア太平洋地域生協委員会と大学生協協議会の委員です。
開会式は、カナダの民族の踊り(いわゆるインディアンの踊りと同じ)、移民者の踊り、サーカスや歌など現在の芸術の紹介と色とりどりの楽しい企画で始まり、主催者、来賓のあいさつに入りました。
【ロベルト・ロドリゲスICA会長あいさつ】
ICA会長(ブラジル農協)ロベルト・ロドリゲス氏はあいさつで、ICA104年の歴史上初めてアメリカで開催されたこと、グローバル化や自由化、競争、集中という高波は、止めることのできない現実であること、協同組合としての挑戦課題は、我々自身の協同組合の発展の「第二の波」を、それ自身高波に成長させるよう保証するすること、すなわち、協同組合が過去150年間、時代のニーズを満たした様に、次の千年期のニーズを満たす、進歩と包容、発展と公正の勢力として自らを高めることを強調しました。
ここで「第二の波」は、上記グローバル化等の高波に対処している協同組合側の方法――統合、合併、再構築、コスト削減、合弁事業、戦略的同盟――の結果としての大きな変化と説明しています。「第一の波」は150年前の協同組合の世界的な結成の波のことでしょう。
会長挨拶で特に印象に残ったポイントは「集中の問題は、グローバリゼーションのキーであり、本性の構成要素です。」「集中が今日の経済モデルの一面であるとすれば、他の一面は排除(排他性)です。一方でより多くの集中が、他方でより多くの排除をもたらしています。この高波はその後に常に死を残していきます。」と述べた後、協同組合発展の「第二の波」は、民主主義とその結果である平和を防衛する、すばらしい機会を協同組合にもたらすと訴えたくだりです。
その理由として第1に、協同組合内部の集中は、(巨大企業のそれとは違って)排除の結果ではないこと、逆に、巨大な国際市場へのアクセスを追求する過程で、全ての人々を包含するとともに、地域市場をオープンに保つからであること。第2の理由に、協同組合が、他のセクターから排除された人々のために解決策を提供するからであると説明しました。特に後者は新しい視点と言えます。
「世界中で大学を出た若者たちが雇用を見いだそうとして、類似の専門職によって作られた協同組合に参加している事例がみられます。民営化によって職を失った政府の役人がサービス協同組合を設立し、かつての雇用者と新しい雇用者のために働いています。」
「協同組合は包容的組織であり、排除の組織ではありません。もちろん、自らのイメージを守るために、協同組合が悪い組合員やリーダー、悪い役員の除外を余儀なくされることは事実です。だがそれは排除ではなく、もみ殻から小麦を選り分けることなのです。」
【アナン国連事務総長ビデオメッセージ】
印象に残った部分。
「あなた方の仕事は、国連が最も努力を傾けているあらゆる価値を北進し、1990年代の大規模なグローバル会議で採択された諸決定を実行する上で大きな力になっています。それはあなた方が、平和のために、持続可能な発展のために、人権のために、すべての人の教育と保健医療のために、女性の地位向上のために、完全かつ生産的な雇用のために、そして何よりも貧困の一掃のために活動していることです。」
【ステファン・ディオン氏、カナダ政府枢密院議長兼政府間業務大臣】
氏は「協同組合運動は、グローバリゼーションに人間の顔を与えるのを助ける」と題して、デジャルダン運動の歴史を誇らしげに紹介した後、協同組合運動は一世紀以上にわたって社会的目標と収益性への配慮を均衡させることに成功してきたこと、現在のグローバルな社会において、コミュニティの精神と社会的包容、民主主義という、協同組合が依拠する価値と共に、この成功を継続させることがかつてなく重要になっていることを強調しました。
2. ICA大会全体会
全体会は「組合員に価値を付加する:新しい千年期にむけての協同組合の挑戦」のテーマで各方面から問題提起が出され、各報告ごとに質疑応答形式で進行しました。主な提起者:
◆「組合員であることに意味をもたせる」
(CWS:イギリス卸売協同組合、グラハム・メルモス氏)
◆「協同組合事業の新しい形態」
(NCBA:全米協同組合事業連合、ポール・ヘイゼン氏)
◆「協同組合の特色を打ち出す」
(イタリア・レガコープ、ステファニア・マルコーネ氏)
◆「協同組合とコミュニティの利益」(略)
(カナダ・デジャルダン、スーザン氏)
◆「我々の協同組合の特色を打ち出す」(略)
(聖フランシス-サビエル大学(加)と米国の合同発表)
◆「グローバル女性委員会のプレゼンテーション」(略)
◆「新世紀におけるグローバルな協同組合:状況報告」(略)
◆「大会のまとめ」 (ビクトリア大学イアン・マクファーソン氏)
最初に、ゲストスピーカーとしてケベック州政府副知事のベルナルド・ランドリ氏が挨拶にたちました。印象に残ったのは、州政府の人の口から、市場経済と対抗し人々の幸福を希求する社会経済という言葉が聞かれたこと、その社会経済の充実のために協同組合は欠かせないパートであることが発せられたことです。
印象に残った他の文言:「値段の安さも必要だろう。しかし、児童を搾取してまでそれを実施するのはいかがなものか」「安い値段も必要だろう。しかし、動植物を絶滅させてまでそれを追求するのかいかがなものか」
◆「組合員であることに意味をもたせる」
この中でメルモス氏のプレゼンが生協活動に関する重要な提起をしていました。氏のプレゼンは、CWSがこの間の経営危機を克服する際に組合員の民主的な運営参加を実現するために努力してきた内容です。
先ず氏は、「イギリスではこの2年半、ブレア首相が第三の道を説いてきた。第三の道は、パブリックセクターとプライベートセクターの間にもう一つの道があり、時にはより効果的な道であることを認識している。我々は、その(第三の道)のより良い方法は協同組合であると言っている」とイギリスの新しい動きを紹介し、「第三の道を最も理解しやすく推進する方法は、我々の協同組合アイデンティティの中心的要素――我々のメンバー――を強調することである。それは何が我々と競争相手の他の事業体とを区別しているのかを強調すること、今がこのユニークな資産を生かす時である。」と述べました。
続いて、氏は「ここ20年間を振り返ってみると、失敗した協同組合は多くの場合、単に商売上の失敗だけでなく、民主主義的にも失敗していた」と述べ、「CWSスタッフも現在は協同の価値と原則で仕事をしているが、私が経営責任者になったときは、スタッフの士気が相対的に低いことに懸念があった。従業員、組合員、国民大衆が全体として、我々のしていることを理解しなければ、多くの優れたものを生み出すことはできない。この鍵は地域理事会の役割にある」と展開し、適切で責任ある参加システムによる組合員の役割の発展をめざした「CWS全国メンバーシップ戦略」と「6つの目的」を紹介しました。
@まず、民主主義的組合員参加の目的は、全国7つの各地域において、CWSの民主主義的問題への十全たる参加を容易にするために必要な量と質を持った、活動的な組合員基地を持つことを保証するものであること。その際、委員の欠員を放置しないこと、部門別委員会・地域理事会にマネージャーが出席し、定期報告することは本質的問題であること、情報なしには委員が事業の一部になり得ないこと、全ての委員が自分たちの店の収益性を認識することを確保しなければならないこと。等々。
A利用割り戻しの目的は、組合員のCWSへの忠実な利用増を促進するものであること。その際、伝統的な出資配当とのいくつかの論争があるが、組合員であることの主要な利益は、事業の運営方法に発言権を有していることであること、違いは民主主義であり、配当ではないこと。生き生きとした協同組合の民主主義には、知性があり断言的な人々――持っているスキルを使って、我々が成功した協同組合事業をつくることを助けてくれる人々――が必要なこと。等々。
B教育訓練に関する我々の目的は、協同組合運動やその組織構造に関係して、我々の価値と原則、そしてコーポレート・ガバナンス(企業統治)の理解が、事業や商売の問題と一緒に、組合員やスタッフに伝わることを保証するものであること。その際、全ての部門別委員会、地域理事会は、協同組合の価値と原則に関して訓練を受けること、事業の面も同様。全ての地域理事は協同組合カレッジの協同組合理事コースを受講すること。等々。
C組合員活動の我々の目的は、商いをしているそれぞれのコミュニティーにおいて、組合員を巻き込んだ活動が協同組合運動の輪郭(イメージ)を高めることを保証すること。以前は組合員活動といえばレジャーが基本の活動、○○祭り、コーラス、ダンスなど往年のコープを連想する企画であった。これらは往々にして組合員の注意を事業運営から逸らすものであった。我々の活動は今日の消費者の関心事(公正な表示、フェアートレード等)に事業として応える努力を行なうべきである。
D組合員がCWSファミリーの事業全体の情報を適切に得るためには、良好なコミュニケーションが重要である。そのためには、全ての店舗に組合員掲示板を設置し、適切な情報を掲示することが求められている。高質の情報を、年次報告書、組合員雑誌、組合員ニュースを通じて提供するする。インターネット・ウェブサイト、ビデオを使った会議、その他組合員会議会議のために技術を駆使する。
E組合員組織の運営目的は、焦点の定まった専門的な仕事を通じて、標準化され一貫した政策と組織とともに、会員であることがCWS内部での本流の活動であることを確実にするためであること。CWSの全従業員は現在、卸売協同組合の組合員になることができる。
以上のことを述べた後、氏は、すべてのタイプの協同組合で、参加型民主主義が極めて困難な仕事であることに気づいており、発想の大胆な転換が求められていること、あらゆる協同組合が参加の欠落に悩んできたし、これからも悩みは続くこと。この大会の参加者で、組合員の無視が引き起こすリスク――経営者への過剰な権限付与、外部からの乗っ取りに対する無防備、腐敗、財務の不始末――に気づかない人はいないはずだと展開し、組合員は事業のパートナーであると言明しました。
氏の最後の締めくくりは、長年の経験から確信に満ちたものでした。
「組合員は事業のパートナーである。協同組合マネージャーの役割と技術の重要な部分は組合員とかみ合うべきだし、逆もまた同様である! 彼らは同じ惑星に居住している。心のこもった他者との協同なしには、何の機能も果たし得ない。健全な協同組合という、我々のユニークな資産は、良好なコーポレート・ガバナンスにとって決定的であり、良好な協同組合事業を営む上でも決定的である。メンバーシップが重要である。そして、私たちすべてがそれを知っている。」
◆「協同組合事業の新しい形態」
全米協同組合事業連合会(NCBA)のヘイゼン氏は「毎年、全国で数百万の人々が協同組合に参加することによって、自らの人生のより多くをコントロールすることを選択しつつある」と述べた上で、「NCBAにおける我々の目標は、協同組合事業体を強くて、他とは違った統一された経済セクターにし、アメリカ国民一般に認知されるようにすることです。今日、アメリカの多くの人は、アメリカには3つの経済セクターしかないと信じています。すなわち、@投資家所有企業が支配的な営利セクター、A地方、州、連邦政府などの政府セクター、B赤十字や大学、宗教団体などを含む非営利セクターの3つです。NCBAではアメリカ経済の第4セクターを考えています。それは協同組合原則と価値を基礎にしたセクターです。協同組合セクターは、広範かつ多様な人々の経済的社会的福祉に役立つ事業の上に築かれるものです。経済における強力な第4セクターという目標達成のために、アメリカの協同組合は、新しいサービスを提供し、新しい協同組合事業を展開することによって、組合員に価値を付け加えつつあります。」と報告しました。
◆「協同組合の特色を打ち出す」
イタリア・レガコープのマルコーネ氏は1980年のレイドロー博士の『西暦2000年における協同組合』を紹介し、そこから導かれることは、「協同組合が実行を試みるべきより良いマーケティングとは、使命、原則や価値に強く結びつき、かつその事業のアイデンティティを一般国民に明瞭かつ簡潔に理解してもらうことのできるマーケティングである」と述べました。そして「競争に勝つマーケティング」に加えて、「社会的マーケティング」とも呼ぶことのできるもう一つのタイプのマーケティング――組合員や市民、コミュニティとの関係を拡大し、よってより良い社会の確立に貢献するもの――について強調しました。
そして、「人々の尊重、社会的に重要な問題へのコミットメント、今日の行動が未来世代に強い影響を与えることへの関心、これらは協同を社会コミュニケーションの主要な担い手の一つとします。この社会コミュニケーションが、協同組合の特色のマーケティング戦略における鍵となる要素である」とし、イタリアにおけるいくつかの協同組合セクターの取り組みを紹介しました。特に、最も興味ある事例として、小売りセクター、ソーシャル・ケア協同組合をあげていました。
氏は最後に次のようにまとめています。
「周知のように、我々の努力を何に焦点化するかの共通の特徴は、広い意味において、顧客満足に向けて常に注意力を高めていくことにあろう。我々にとって、顧客満足は純粋な事業問題でもなければ、単純なコミュニケーション活動でもない。本来、我々はこのために特殊な職業使命感を持っており、我々の歴史は人々のニーズや願いに最も良く応えることに基礎をおいている。しかしながら我々には、適切な道具で実践し、計画し、点検することが求められてこよう。多くの道具とともに、社会的バランスシートもまた有効であろう。それは我々の特色を示す革新的で活発な解決策を見いだすための我々の不断の探求がもたらすものなのである。」
◆「大会のまとめ」 大会最終日には、ビクトリア大学のイアン・マクファーソン氏から、大会のまとめが提起されました。「大会で焦点化されたもの、トピックなどが8つほどあったのではないか。」
Organisational change(組織的転換)
Projection of distinctiveness(特色の発信)
Technological innovation(技術革新)
International linkages(国際的連携)
Mobilisation(動員)
Inclusiveness(包容性)
Social concern(社会的関心)
Members(組合員)
「これらが実行されれば、次の千年期は楽天的に見ることができる。なぜなら、8つのテーマの頭文字を拾い出してつなげれば"OPTIMISM"だから。」
3. ICA大会「ビジネス・フォーラム」
大会2日目の午前中は3つのビジネスフォーラムがもたれました。
1:「グローバル環境における新たな金融サービス」
2:「フード・セクターにおける新たな挑戦」
3:「規制緩和・民営化に直面した協同組合サービス」
参加者は、回って数えた限りでは、1:500名、2:250名、3:250名といったところです。やはり、デジャルダン運動(信用組合運動)の地だけあって第1の分科会が一番多い情況でした(但し、ここだけ日本語の同時通訳がない)。日本の参加者の多くは、農協と生協が一緒になった第2の分科会に参加したようです。私たち(岡安、栗木)は第3の分科会に出席しました。青年フォーラムの参加者も多く見受けられました。
【「規制緩和・民営化に直面した協同組合サービス」分科会】
内容は、ILO(国際労働機構)、ICA住宅委員会、ICA保健委員会、、ICA労協委員会からの報告、各国からはアメリカ、ブラジル、カナダ・ケベック等々からの事例報告と、質疑応答で進行しました。
日本語発言としては、日生協前理事、医療部会長でICA保健委員会議長の加藤さんが、世界の保健・医療の協同組合の活動を報告しました。医療生協と言っても、世界的にはクライアント・コープ型、ドクター・コープ型、その混合型が存在しているなど。
全体としては、新しい状況の中で、協同・協同組合が生まれる。この状況下で、ICA協同組合アイデンティティーを財産として、世間に広く浸透させること重要と確認されました。新しい協同組合の一つとして「連帯協同組合(Solidarity
Cooperative)」の事例が紹介されました。単なる「協同組合間連帯」ではなさそうで、その地域である解決方向に応じて、事業主、専門家、消費者、労働者などの個々人が結成する協同組合のようです。
【第3日全体会での第3分科会の報告より】
基調は「福祉など今までの公共的事業の民営化・規制緩和の中で、協同組合のすべての力を活用して事態に臨む」「新しい形態の協同組合を社会経済に位置づける」等々で、以下の4点の必要性を提起しました。
1. 21世紀の協同組合オプションの認識
(協同組合が選択肢の一つとしてあることを社会に知らししめること)
2. 労働者との戦略的同盟の構築
3. 適切な法的環境の創造
4. 人的資源開発
4. ICA総会:ICA
2005(ICA自体のビジョン)
ケベックでの総会(定期開催)のメインは、ICA自体の組織ビジョン「ICA 2005」の確認です。大枠としては、「ミッション」(以前に確認した模様)を受けて、今回「ビジョン」「アクションプラン」を確認したわけですが、「世界の協同組合運動トータルのビジョン」ではなく、ICAという組織のビジョンである点が、参考になりました。
もしかすると、現在、地域/全国センターへの再編を進めている中で、「全国センター」のイメージを全体で共有する活動として「ビジョン論議」することが求められているのかも知れないと感じる内容でもあります。
これらの内容に合わせて、ICA大会の中身がつくられた(トップダウンという意味ではありません)と言えます。
【ICAミッション】<以前に確認済み>
「ICA(国際協同組合同盟)は、他に従属しない非政府組織であり、世界中の協同組合を統一し、代表し、それら(の目的)にかなう連合体である。」
【ビジョン】<今回、ケベックで確認>
「2005年までに、ICAは会員と協力して、以下のような組織になっている。すなわち、
@ 協同組合の価値とアイデンティティを宣伝し浸透させるとともに、協同組合が攻撃を受けているときには、効果的なコミュニケーション政策を通じて、市場において、影響力のある公共政策によって、また協同組合の特色を実際に示すことによって、協同組合を保護することを助ける組織、
A 協同組合がすべての国で効率的な事業体として発展することすることを支援し、促進するとともに、特に発展途上国や過度期の国の協同組合のニーズ、経済・社会活動の新しい領域での協同組合の発展に注目する組織、
B ICAの各セクターの組織が各メンバーに有益な事業・サービスをするよう、また連帯の原則を尊重しながらセクター感の相互互恵的な協力を増進するよう、援助、支援する組織、
C 本部と密接に、また援助を受けて仕事し、各地域のICA会員の対するお仕着せでないサービスを提供する活動の中心となる効果的な地域事務局(Regional
Offices)を整備し、維持する組織、
D グローバルな政策を決定し、ICAファミリー全体に戦略的指針を提供する理事会によって導かれる組織、
E ICAの協同組合アイデンティティの声明を承認した、すべての主要な協同組合運動とセクターを会員にして代表する組織、
F 「学ぶ組織」として、最良の実践、革新的活動、協同組合発展の新しい形態等についての啓発と情報の交流を促進し、支援する組織、
G 世界の協同組合のための、またそれについての、情報と専門的技術・知識のセンターとなる組織、
H 主要なグローバルな問題に影響を与えることによって、またICA会員の重要領域における国際エージェンシーとして、市民社会の中で指導的な役割を果たす組織、
I その目標を達成するに足る資源を持っている組織。
【アクションプラン】
(上記ビジョン毎に、数項目のアクションプランが記述されている。略)
5. ICA生協委員会会員会議
ICA生協委員会会員会議は大会に先立って開かれ、16カ国約50名が参加しました。ヨーロッパが半数以上を占め、アジア太平洋地域からは日本、バングラディシュが参加登録していました。。
生協委員会執行委員会からインターコープ(協同組合間貿易機構)との合併が報告され承認されました。新組織の名称は「ICA コンシューマー・コープ・インターナショナル(略してCCI)」です。
来年の活動計画の主なものは、四つの作業委員会(食品品質管理(検査センター)、環境問題、教育研修、電子商取引)の活動と生協委員会主催の国際セミナーです。2000年は12月にリオ・デジャネイロで、2001年ICA総会に併催しては9月にソウルの予定です。
特別報告として、コンシューマー・アメリカ(メキシコ以南の南北アメリカ大陸がエリア)から、トレーニング、その資材、交流、拡大、ワークショップ等の活動報告があり、この2年間で、○130万人の組合員獲得、○2000人のスタッフ新採用が結果として得られたと、意気盛んでした。
執行委員の選挙では、日生協の田中副会長が引き続き副委員長に選ばれました。
6. 青年フォーラム(メンタリングなるもの)
全体概況は、フォーラム参加者の萩原君が報告しています。ここではロドリゲス会長あいさつのポイントと「メンタリング」(良き指導)の意>というものの印象を報告します。
青年フォーラム第1日目(8月29日)午後に、ICA会長ロドリゲス氏が激励の挨拶を行いました。会長は、現在の協同組合は3つのタイプがあると紹介し、青年の奮起を促しました。
・既存の協同組合で、自己改革をしている協同組合
・既存の協同組合だが、自己改革をしていない協同組合
・新しく始まった協同組合
その後、「メンタリング/シャドーイング プログラムの紹介」の時間があり、栗木が"メンター"として出席しました(岡安は傍聴)。
メンタリングとは「他の人のライフスタイルに意義深い有益な影響を与えること。一般的には人間的一対一のふれあいの結果として実現する」と定義され、協同組合活動を通じて、青年の成長に寄与する教育方法のようです。
それ自身は参考になる部分があります。例えば、指導者(メンター)のやるべきことは、評価を入れないで耳を傾けること、逆に、やってはいけないことは、酷評、助言、救助など。被指導者(メンティー)のやることは、自分の方法でやること、決して指導者の方法でではない!、自分が学んだことは自分のものにすること、自分の行動には責任をとること、やっかいな状況をあつかうこと、そして全体としてメンティーは、メンターから学んだことを自分自身に合ったスタイルに修正すること。
メンタリングは「与えられた状況下で最大の教育効果を出す」と位置づけており、いわば、これは「OJT」と「十全参加」の中間に存在するという印象を受けました。おそらく、カナダ協同組合連合会が推進している「国際インターンシップ企画」などと関連があるのかも知れません。
このメンター−メンティー関係を日本の大学生協で言えば、専従幹部・教職員理事と学生委員の関係の一側面と見ることもできます。当然、学生の学ぶ意欲が大前提ですが、研究には値するものと言えます。
[付].カナダ・ケベック州の大学生協
1.
ラヴァル大学協同組合「ZONE」訪問記
「ケベック市のラヴァル大学にスチューデント・コープがあるはず」――日本を出発する前、インターネットから検索した情報を頼りに、ラヴァル大学に突撃訪問をしました。COOPはモーリス・ポラックというビルにあります。かなり大きなビル(100m×60m位か?)の1階が「学生生活支援ゾーン」で、"BAR"と書かれた食堂(昼は出さないがアルコールカウンターもある)等と並んで「COOP」があります。いわゆるアメリカ型のカレッジストア店舗と言えます。突然の訪問にも係わらず、英語のしゃべれる専門書担当のジャン-ピエールさんから大変温かい説明をいただきました。
1階にコンピュータ、文具、教科書以外の書籍、バッグなどでざっと200坪程度のフロアです。地下は教科書で、カスタム教科書もおかれています。約100坪ていどのフロアです。地下には、別途倉庫があります(100坪ほど)。コープ「ZONE」の本部事務所は、同じ建物の3階にあり、アメリカなんかの会社オフィスと全く同じ清潔さと配置です。この店は、3年前に営業権を買って改装したもので、以前は(おそらく業者で)店づくりが保守的で、学生から人気がなかったと言っていました。
このコープ「ZONE」はこの店舗を含めて4つの店舗を持っています。
◆ Pavillon Maurice-Pollack : 専門書籍、教育・情報関連用品
◆ Pavillon Adrien-Pouliot : 理工系の教育・情報関連用品
◆ Pavillon Charles-De Koninck : 法律・社会科学系の教育用品
◆ ヅifice La Fabrique : 教育・芸術・情報関連用品
(このキャンパスには32のPavillon(分館)があり、寒さ対策のためすべて地下でつながっているとのこと。また以前女子学生を襲う不届者がいたので監視カメラを設置した。今はそういう事故は無いとのこと==何故こんなことを教えたのかは分かりません)
現在のコープ「ZONE」は1996年に3つのコープが合併してできたものだそうです。
店舗の入り口付近の看板には「MEMBRE COOPSCO」(ケベック州学校生協連合会の会員)の文字も見えました。
2. ケベック州学校生協連合会
名称は「F仕屍ation des coop屍atives
qu暫残oises en milieu scolaire (FCQMS)」です。
ケベック州には1944年から学校生協が存在していました。連合会は1983年に設立され、現在は59の学校生協が加入しています。連合会の会長は学生がなっています。
連合会は、4つの価値(@民主主義、A連帯、B責任、C公正)を位置づけて事業を進めており、1998年度事業高は約4850万ドル(約40億円)です。ここ数年の伸びは順調で、94年1950万ドル、95年2450万ドル、96年3990万ドル、97年4650万ドルのようです。
COOPSCOの名称は「COOPSCOの旗の下に再結集して、FCQMSの会員協同組合は1億ドル以上の事業高を実現した」という記述の中に見られます。
1999年10月8日全国大学生協連理事会に報告
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