韓国における社会的企業育成の第2段階
韓国政府労働部「社会的企業育成のための基本計画(2008~2012)」の特徴
協同総研 岡安喜三郎
韓国では、2007年7月に「社会的企業育成法」が施行された。韓国の社会的企業育成法は、「社会的企業」を冠した法律としてはアジア諸国で最初である。この法の制定に至る過程や社会的背景、社会的企業の意義等については、既に本誌で紹介されている通りである。
それから1年数ヶ月経た昨年11月、「社会的企業育成のための基本計画 (2008~2012)」(以下「基本計画」)が政府労働部(「労働省」に相当)から発表された。労働部の説明によれば、施行以降、総計11回にわたる政 策フォーラム、懇談会、ワークショップと、2回の公聴会を経て準備され、発表に至ったもので、本文は6章、40ページにわたる。
この基本計画は以下のような点を新しく提起しており、社会的企業育成の第2段階と言えよう。
【自治体の条例制定の推進喚起】
この「基本計画」では、地方自治体の条例づくりへの言及が見られる。これが社会的企業 の育成の推進にあたって、いくつかの踏み込んだ内容ともなっている。例えば、社会的企業の製品やサービスの「優先購買」のために地方自治体が条例を準備す ることへの言及、今まで政府内の設置に限定されていた「社会的企業育成委員会」を、条例によって自治体内にも設置可能とする案などが提起されている。当初 の連携地方自治体制度から、地方自治体に対しより主体的(分権的)な育成姿勢を求めるものと言える。
【「予備社会的企業」制度の導入】
この間の社会的企業の設立が、社会的就労事業(54.5%)、障碍者施設 (18.2%)、自活共同体(16.9%)等前組織からのものであることに鑑み、様々なルートの可能性を追求する育成システムの構築を強調している。その 一つが、「予備社会的企業」という、社会的企業への前段階(いわば社会的企業候補組織)の制度である。
【自治体、NPO、大学等の連携】
上記の制度を構築することによって、従前の企業連携型(これ自体「1社1社会的企業」 キャンペーンを提起)に加えて、地域連携型とモデル発掘型を導入し、中央、地方段階での社会的企業育成の質と量の向上を目指すことが提起されている。「自 治体を中心に非営利法人・団体、大学、研究所などが参加する」仕組みである。
【学校(大学)教育の積極的活用】
社会的企業を社会に馴染ませるため、中学教科書などに社会的企業の内容と価値を反映さ せたいとの提起とともに、社会的企業家の養成課程の拡大(08年18課程 → 12年30課程)、標準教育課程開発、専門教育機関の育成案を準備するとのことである。大学(大学院)の学位課程の専攻分野または教科課程開設を支援する ことも計画している。
【青年層への働きかけ】
青年層には、国内外の多様な社会的企業の職場体験、インターン、ボランティアなどの機会を提供して社会的企業家に育成する。たとえば、職場体験(毎年1万5千名), 海外インターン(毎年5千名), 海外奉仕(毎年4千名)などを計画する。
以下、6章にわたる本文のうち、後半のⅣ、Ⅴ、Ⅵ章を紹介する。<クリック>
〔「協同の發見」2009年4月号〕