「社会的企業ノート」(1)

「雇用」創出、地域の経済と福祉の担い手

社会的企業と新しいタイプの協同組合

「社会的企業の定義」をめぐって

2003.6.12 岡安 喜三郎

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はじめに

 このノートの目的は、「社会的企業」を正面から論議する出発点にするためのものである。これに含まれる「企業」という単語が往々にして「営利性」を感じ取らせる[1]ためか、ここ数年を見てもヨーロッパでの論議の高まりとは異なり日本では、社会的経済や第三セクター、非営利・協同等の用語の陰に隠れて「正当な」取り扱いを受けていないように思える。

 なぜ正面から取り上げることが重要なのか。これは上記の情況とは裏腹に「企業」(これには協同組合も含まれる)という形態であるからこそ、同じ社会目的を持った他の活動団体に比べて労働という点で「有給労働」を曖昧にしないからである。このことは伝統的NPO等に比べて雇用能力が格段に大きいと言える。従って、社会的企業は90年代に入ってグローバリゼーションの名の下の社会的排除、リストラ・大量失業等の進行に抗し、社会目的と雇用を結合させた事業体として注目されてきた。

 積極的に「社会的企業」という用語を用いる上で、そろそろ一つの類型化がイメージできてきたことを念頭に置いている。その点では欧州連合(EU)での実例調査・研究が大いに参考になる。そこでは社会的企業として、アソシエーションの企業行動の強調、財団の民主的管理手法、協同組合の社会的次元の拡張など、既存の団体がそのままの組織形態を保存して社会目的事業を遂行するというのではなく、社会目的性に見合う組織形態の改革を含んでより効果的な社会的企業へと進もうとする一連の動きを見る。イタリアの社会的企業である社会的協同組合の法律もこの文脈でとらえられる[2]

 現在日本労協連を中心としてめざしている「協同労働の協同組合」も、この社会的企業の文脈の中でとらえることが可能である。その際、「社会的企業」一般と「協同労働の協同組合」との特性の差異は労働主体の重点の置き方にある。「協同労働の協同組合」は協同労働者の協同はもちろん、利用者との協同、地域との協同を基礎とし、その仕組みが企業統治レベルでは労働優位を留保したマルチステークホルダーズ型となる協同組合ということができる。

 ヨーロッパのみならず世界中で、グローバリゼーションの名の下、その国や土地に根付いていた文化の否定・破壊が起き、地域崩壊と社会的排除・排斥が進行する中で、地域の再生を掲げ、社会的包摂・統合・結合をめざして「事業を行う」共通項が明らかにされ、注目されつつある。このような意味で、社会的企業は公益性を担う事業体と言うことができる。

社会的企業へのアプローチ

 「社会的経済を担う企業」、「社会統合をめざす企業」、「社会結合をめざす企業」、「社会目的を持った企業」、「社会性を持った企業」、「コミュニティに密着した企業」、「コミュニティ・ビジネス企業」、「社会目的事業」、「社会ベンチャー」、「持続可能戦略」、「非営利収入生成活動」、「非営利企業」。これらは社会的企業の目的性を明瞭にするものとして、また社会的企業関連用語として使われている。

 「社会的企業(Social Enterprise)」という用語は90年代からヨーロッパで脚光を浴びてきた[3]が、社会的経済を担う事業体を欧州連合(EU)では「社会的経済企業」(Social Economy Enterprise)と総称して、協同組合(C)、互助組合(M)、アソシエーション(A)、財団(F)を挙げている[4](いわゆるCMAF)。これを社会的企業の説明として使用する場合もある[5]

 社会的企業概念を上記CMAFが中心であったとしても、その総和のことと理解するのは早計である。さらにそれを静的に理解することは尚更である。実際に活動している団体や公共機関、研究者達によって使われている用語としての社会的企業の範囲には、株式会社も含まれる。またEUだけを見ても、CMAFの各法形態・組織形態自体が大きく変化しつつあり、21世紀初頭の「流動的」な時代の中にあると言える。

 概念や定義の差異を問わなければ用語自体、アメリカでは40年にわたる「非営利」セクターの活動の中から70年代に生まれたとされる[6]

 社会的企業は新興過程でもあり、とりあえず法人形態が多様である。多様性(それは良い意味で特性を活かした自立と協同)の中から経済活力を生み出すという命題は、この社会的企業の活動分野にも重要なものであろう。もっとも、社会的企業は法人形態を問題にはしないが、それは一部が未法人で良いとか、NPO・アソシエーションは事業ができなくとも良いというわけではなく、逆に、公益性を担う事業体として経済活動に積極的に関与させるべく、適切な法人格制度・税制度を整備することが国の政策に求められることは言うまでもない。

 社会的企業の事業内容から見ると、大きく2つの中身、すなわち、コミュニティにおける社会福祉サービス、そして社会的に不利な人たちを働く場に巻き込む社会統合の2つの柱となるといわれる[7]が、とりわけ後者において障害者等を含めた一人ひとりの労働主体形成、主体となる集団的労働の作り方については、ましてやこれを念頭に入れたガバナンスについては、実践的には模索の段階にあると思われる[8]

 また前者(社会福祉サービス)においても、後者(社会統合)においても、社会目的への関与に対する満足性と相対的低報酬への納得という把握構造が見受けられる[9]が、ステレオタイプ化された把握にならないように留意すべきであろう。高額な報酬の実現は市場経済的に見れば競争が助長されることでもあり、一概には言えない現実があるのは事実であるが、現実の現場で働く労働者はより高い収入を得たいと思う水準の賃金であるのが現状である[10]。要はこの社会的企業の活動と仕事に、ディーセント・ワークの達成を主要目標とすることが決定的である。

アメリカ他における社会的企業

 社会的企業という用語は、社会的に不利な人たち、ホームレス、その他危険に晒されている人たち向けに、就労機会の創造という方法で、事業を立ち上げたアメリカの非営利団体のグループによって1970年代に創り上げられたとされる。アメリカの社会的企業については「非営利団体」の事業として記述される。ここでは「非営利(non-profit)」なのか「非営利目的(not-for-profit)」なのかという論議には立ち入らない。「覚えていてください、『非営利(nonprofit)』は内国歳入庁(IRS)の分類であることを...これはマネジメント・スタイルではありません!」(リチャード・ステッケル、Filthy Rich and Other Fantasiesの作家)

 この言葉からは前節のガバナンス、労働主体形成や集団的労働への関心は出てこないと思われる。これらを背景にして、社会的企業の目的が二重ボトムラインの達成として「合理的」に語られる。

 アメリカで語られる社会的企業とは、赤字にしない運営の一方で、前向きの社会的影響力を創るために設立された、非営利ビジネスベンチャーもしくは収入生成活動に対する包括的な用語である。その共通した特性として、社会的企業とは二重のボトムライン(最重点課題)−−社会的使命と財務目的−−の達成に専念することである。社会的企業は双方のタイプの成果の実現に責任がある[11]。社会的企業の二重ボトムライン説は他でも(アメリカだけではなくイギリスでも)使われている[12]。二重のボトムラインによる目標説明は、筆者が大学生協に就職したころから生協の目標設定に関する使われ方と同じである。

 ここで、アメリカの社会的企業についての英国通産省の説明がイギリスとの差異を示していて興味深い。

 アメリカでは、「非営利目的(”not-for-profit”)」セクターは40年の歴史を持っている。それはイギリスの社会的企業とは大変異なった環境で活動する米国団体の歴史である。アメリカ最強団体の多くは、1960年代早期に、市内暴動、公共サービスの削減、もしくは伝統産業の長期低落の原因に取り組むために事業を開始した。出自が何であろうと、「非営利目的団体(”not-for-profits”)」は合衆国税当局(IRS)から認知され、イギリスの社会的企業には当面適用されない免税の恩恵を得ている。例えば、社会的に不利なグループに訓練を提供する幾つかの団体は、英国国民保険相当分が免除される。イギリスの社会的企業と同様に、合衆国の非営利目的団体も、様々なところから収入を引き出している。しかし、際立って二国間で異なることは、アメリカの団体が実業界の「本流」から得る恩恵の総額である[13]

 いずれにしてもアメリカでは、社会的企業は(独立採算ではなく、利益の不分配制約という意味で)非営利の事業体として語られるので、一般に(独立採算、利益配分するから営利に分類される)協同組合は含まれないことになる。これはアソシエーション等を語る場合と同様である。

 オーストラリアでも社会的企業の運動が報告されている。その歴史は浅く、先駆者であるピーター・トムソン氏は1970年代に英国オックスフォード大学に学び、その後また滞在した1996年から2000年に社会的起業家ネットワークを支援する関係や、ブレア首相との友好関係をつくり帰国後2001年3月には第1回オーストラリア社会的起業家ネットワーク会議を開催するなど、社会的起業家ネットワークの開発に携わっている[14]

ヨーロッパにおける社会的企業の調査研究

 社会的企業については、欧州、特に欧州連合(EU)における実践と研究が世界に影響を与えてきたと言えよう。その最も大きなインパクトは欧州委員会第12総局の支援を得た、1996年のEMESネットワーク設立であろう。EMESの名称は最初のプロジェクトである「the emergence of social enterprise(社会的企業の出現)」から付けられ、2002年4月にはベルギー・ブリュッセルで法人化された。現在はベルギー、アイルランド、ポルトガル、スペイン、イギリス、フランス、スウェーデンの8ヶ国の9研究センターと、ドイツ、デンマーク、フィンランドの3ヶ国3人の個人が会員で、CECOP(欧州労働者協同組合・社会的協同組合・労働者参加企業総連合)が準会員として参加している。当初のEMESプロジェクト自体は1996-1999年の期限プロジェクトで、その期間中でも社会的企業に関する意欲作が発行されて、その12総局の企画の結果としてプロジェクトと同名の本が出版された[15]

 このプロジェクトの最大の成果は、広範な調査と共に、社会的企業を定義する、そのための一連の基準づくりにあったと言える。とくに、一定の基準の開陳によって社会的企業というグループが社会に対し影響力を持つ大きなステップになったと見て取れる。というのは、今でこそ協同組合にICA定義が存在するが、ICAは当初の百年間それはなく、運営原則の確認だけで運動と組織を発展させてきたことを想起すると、社会的企業におけるEMESの一連の基準は、社会的企業とは何かについて実践的な議論のできる素材となりうると予感できるからである。

 なお、EMESの調査研究では、EUのほとんどの国において法的文言や公式文書には使用されてはいない社会的企業の表現は、一国レベルで使われる幾つかの用語−−オーストリアの「社会的経済企業」、ベルギーの「社会目的を持った会社」、スペインの「社会目的を持った協同組合」、イタリアやポルトガルの「社会的協同組合」のような用語−−に対する有用な総合概念となっていると報告している[16]。なお、前述したように2002年7月には英国通産省(DTI)が「社会的企業:成功への戦略(Social Enterprise: a strategy for success)」を発行しているように、「社会的企業」は公式文書に使われている。

 ヨーロッパにおける社会的企業の組織形態に関しては、伝統的な協同組合とアソシエーションとの接近が説明され、いずれその形態移行の収斂点をイメージできるとしている。すなわち、アソシエーションがより企業的性質を採用することによって協同組合形態により近づくこと、一方では、協同組合が、その社会的次元を広げ、事業恩恵を組合員限定ではなく非組合員に拡大することによってアソシエーション形態により近づくという限りにおいて可能であって、幾つかの国で法律の変更が導入され吟味されているが、この収斂パターンをたどるように見えるとしており、その変更は企業的行動を強調する傾向があり、社会的企業はアソシエーション形態よりも協同組合形態の方に軍配を挙げてきていると指摘し、社会的協同組合に関するイタリアおよびポルトガルの法律がそうであり、フランスの「一般利益の協同組合[17]」設立提案を例示している[18]

 アソシエーションと財団は、より生産的・企業的行動に向かって動いている。財団は何らかの形で、より民主的な統治(ガバナンス)の方に転換しつつある。幾つかの国では、協同組合は第一の社会目的を再発見しつつある[19]

 なお附言して言えば、EMESネットワークにしろ、頻繁に開催される社会的経済に関する、また社会的経済に関するコンファレンスにしろ、参加不参加にばらつきがあっても、その実態的構成は研究者、実務者、EUやEU諸国政府関係者、各級地方自治体関係者達である。そしてその内容も単なる研究発表会で終わることなく、何らかの結論、宣言を伴うことが往々にしてある。いわゆる提言型コンファレンスとして理論と実践が蓄積していくのが、社会的経済、社会的企業、非営利・協同等の研究において、日本と決定的に異なるのではなかろうか。

社会的企業を定義するEMESの提案 四つの要素と五つの指標

 ここでEMESが提案した定義侮lつの要素と五つの指標を紹介しておく。これらはEUにおける社会的経済の担い手として確認されてきた諸基準の延長であり、また協同組合の定義・原則が参照されていることが容易に分かる。

◇◇◇◇◇◇

 (1) <四つの要素>は、計画的な独創力の経済的・企業的性質を正式に確認するものとして適用されてきた。

a) 財の生産・サービス提供の継続的な活動

 社会的企業は、企業という限り、その事業の継続性が本質的な要素である。それは伝統的な非営利団体(NPO)とは異なり、通常はアドボカシー活動を主要目標とはしないし、金銭の再分配(例えば、補助金支給財団)のような活動にも従事しない。

b) 高度な自治

 社会的企業は自治プロジェクトとして、人々のグループによって自発的に設立され、その人たちによって治められる。たとえ公共の補助金、公共機関、もしくは他の組織(連合体、私企業など)に依存していたとしても、直接にせよ間接にせよ制御してはいけない。またそれらは「発言と退出」両方の権利(自らを主張する権利、活動を終了する権利)を持つ。

c) 高水準の経済リスク引受

 社会的企業を設立する人たちは、創始したリスクの全部もしくは一部を引き受ける。ほとんどの公共機関とは異なり、財政を維持発展させる能力は、適切な資源を確保しようとする会員と労働者の努力に依存する。

d) 有給労働の下限の存在

 最も伝統的な非営利団体の場合のように、社会的企業も、金銭的資源と非金銭的資源とを、またボランタリー労働者と有給の労働者とを組み合わせる。しかしながら社会的企業で実現する諸活動では有給労働者の下限の存在を必要とする。逆に言えばボランタリー労働者・ボランティアの数・割合はゼロではないが上限設定が必要である。

 (2) <五つの指標>は、社会的企業推進の社会的側面をカプセル化するために選択された。

i) 明白なコミュニティ貢献目的

 一つの最も重要な社会的企業の目的は、コミュニティもしくは特別な人々のグループに奉仕することにある。同様に、社会的企業の特徴は、地域レベルでの社会的責任感の推進が自らの願いであるということである。

ii) 市民グループ主導

 社会的企業は、コミュニティもしくは、ある要求や目的を共有するグループに所属する人々を巻き込んだ集団的活力の成果であり、何らかの方法でそのような次元の特徴を維持しなければならない。

iii) 資本所有を基盤にしない意志決定力

 この一般的な意味は「一人一票」の原則、もしくは少なくとも投票権は最高意志決定権を持つ理事会において資本出資額に依存しないことを意味する。資本の所有者は明らかに大切なのであるが、意志決定権は他のステークホルダー(利害関係者)達と分け合う。

iv) 参加型の性質。活動の影響を受ける人々を巻き込む

 顧客を代表し参加すること、ステークホルダー指向、民主的管理運営は、社会的企業の大切な性格である。多くの場合、社会的企業の目的の一つは経済活動を通じて、地域レベルの民主主義を促進することにある。すなわち、前項と合わせて、ガバナンス(統治)におけるマルチステークホルダーズ・システムの採用が想起できる。

v) 利益配分の制限

 社会的企業には、全く非分配制約の性格の組織だけではなく、いくつかの国の協同組合のような組織、すなわち利益の配分が専ら制限されていることよって利益最大化行動を回避する組織も含まれる[20]

◇◇◇◇◇◇

 

日本において

(1) 法人形態の差異を超えて

 前節の「社会的企業を定義するEMESの提案侮lつの要素と五つの指標」が現在、日本においても十分に社会的企業をめざしうる内容を持っており、討議に値するとの前提を共有しておきたい。その上に立って、上記四つの要素と五つの指標を当面のベースとして日本において自らの団体・企業を社会的企業と位置づけ、自己改革しようとする人々・グループの範囲は思い切って拡げるべきである。範囲を社会的経済を担うCMAF団体と事前制限するのは、日本の実状に合わず、日本の将来にふさわしくない。すなわち、株式会社も含まれる形で日本における社会的企業は論議される。

(2) 新しい組織形態への挑戦

 グローバリゼーションに抗し、「雇用」創出、地域の経済と福祉の担い手足る社会的企業への歩みは、既存のそれぞれの法人形態・組織形態の改革を含んでいる。NPO(アソシエーション)と財団が、より生産的・企業的行動に向かって動き、財団は何らかの形で、より民主的な統治(ガバナンス)の方に転換し、協同組合は社会的次元を拡張し事業成果をコミュニティに還元する第一の社会目的を再発見しつつあると報告されるヨーロッパの情況は、社会の変革に必要な自らの変革の必要性を教えていよう。これはどの様な法形態の団体が公益性を持つかという議論ではなく、新しい公共性・公益性を持つ団体はどの様な組織形態を持つべきか、また持つことが有用かの論議になる。

(3) 提言型のコンファレンス

 先のILO協同組合勧告の討議の際、協同組合の「縦割り」を克服する形で、協同組合学会主催の「ILO勧告シンポジウム」が開かれ[21]、ILOに勧告案に対する学会の意見書をとりまとめた。社会的企業に関しても、関係する研究者・団体そしてできれば公共団体もそれぞれ主体的に関わるコンファレンスの積み上げが重要となる。

さいごに協同組合にとって

 社会的企業運動のコアを協同組合が担うべきなのは当然である。それには、生協や農協のような伝統的協同組合のみならず、労働者協同組合(ワーカーズコープ)においても改革が必要とされている。協同組合がその社会的次元を広げ、事業恩恵を組合員限定ではなく非組合員に拡大するということが必要になるのである。さらにはガバナンスとして、マルチステークホルダーズ型協同組合の実践的検討こそが、今求められている。それは新しいタイプの協同組合と言って良い。

 私はマルチステークホルダーズ型協同組合をマネジメントの面から出発しながらもガバナンスの面から言及することを重視している。というのはこの型の協同組合にはその母体として生産者型、消費者型、労働者型、更にはボランティア型等々があっても良く、その特性を保持する意思決定方式を許容する多様性が、経済活性化につながると思われるからである。マルチステークホルダーズ型協同組合では正にその名の通り、一定の原則(一人一票の適用方法など)の上に、生産者優位、消費者優位、労働者優位等が保持される多様な意思決定方式が想定される。

 なお、社会的企業はその性格から、より地域に根ざした社会福祉サービスにおいても、社会統合・社会結合の事業においても、一人ひとりの労働主体形成、主体となる集団的労働の作り方は、決定的に重要である。ここに、様々な形で関わるすべての人を主体にする事業体の性格を持つ協同組合の優位性はますます明らかになっていくであろう。

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[1]例えば広辞苑で企業とは、「(enterprise)生産・営利の目的で、生産要素を総合し、継続的に事業を経営すること。また、その経営の主体」(第5版)と説明される。しかし「企業(enterprise)」という用語は特に営利性を言うものではなく、本ノートでも中立術語として用いる。

[2]例えば、協同総合研究所編『欧州ワーカーズコープ最新事情』(1999年)収録の「イタリア」(Marco Maillo著,中川雄一郎訳,89109ページ)(Marco Maillo, “Chapter IX Italia”, in Social enterprise and new employment in Europe, edited by C. Borzaga and A. Santuari, April 1998, pp.335-366)

[3]欧州委員会第12総局(当時)の支援を得た1996年のEMESネットワーク設立に代表される。

[4]欧州委員会企業総局ホームページ他(http://europa.eu.int/comm/enterprise/entrepreneurship/coop/introduction.htm)

[5]Department of Trade and Industry of UK, Social Enterprise: a strategy for success, London, July 2002, p.17.

[6]Karen Sherman, Case Study in Social Enterprise, Counterpart International Inc., Sept. 2002, p.1

[7]Carlo Borzaga and Jacques Defourny, The Emergence of Social Enterprise, London, Routledge, 2001, pp.351

[8]斉藤懸三「イタリア社会的協同組合と出合う旅」,『月刊社会運動』266号(2002年5月)3637ページ。

[9]ビクターA.ペストフ『福祉社会と市民民主主義 協同組合と社会的企業の役割』日本経済評論社,2000年,1516ページ (Victor A. Pestoff, Beyond the Market and State: Social enterprises and civil democracy in a welfare society, 1998)。 Carlo Borzaga and Jacques Defourny, The Emergence of Social Enterprise, London, Routledge, 2001, pp.359-360. など。

[10]協同総合研究所「2001年労協仕事と暮らしに関するアンケート調査」『協同の發見』122号(2002年8月),52ページ。

[11]Sutia Kim Alter, Case Study in Social Enterprise, Counterpart International Inc., Sept. 2002, p.5.

[12]Department of Trade and Industry of UK, Social Enterprise: a strategy for success, London, July 2002, p.13.

[13]Department of Trade and Industry of UK, Social Enterprise: a strategy for success, London, July 2002, pp.17-18.

[14]Social enterprise in Australia - An introductory handbook, Adelaide Central Mission Inc., March 2002, p.3

[15]社会的企業に関してEMESプロジェクト中に出版されたものは「Social enterprises and new employment in Europ」1998 edited by Carlo Bozaga and Algeste Santuari(邦訳は協同総合研究所1999年9月14日刊「欧州ワーカーズコープ最新事情」に一部収録)や「Beyond the Market and State: Social enterprises and civil democracy」1998 by V. A. Pestoff(邦訳は日本経済評論社2000年10月刊「福祉社会と市民民主主義」)

[16]Carlo Borzaga and Jacques Defourny, The Emergence of Social Enterprise, London, Routledge, 2001, p.350

[17]島村博「欧州における社会的企業に関する新しい法制度(1)」『協同の發見』112号(2001年10月),27-49ページ。

[18]Carlo Borzaga and Jacques Defourny, The Emergence of Social Enterprise, London, Routledge, 2001, pp.356-357

[19]Carlo Borzaga and Jacques Defourny, The Emergence of Social Enterprise, London, Routledge, 2001, p.362

[20]Carlo Borzaga and Jacques Defourny, The Emergence of Social Enterprise, London, Routledge, 2001, pp.16-18. なお、定義自体は電子データとして順番が少々異なるが以下のウェブにアップされている。”http://www.emes.net/en/recherche/emes/analyse.php”

[21]日本協同組合学会シンポジウム「『協同組合の促進』に関するILO新勧告案をめぐって」は2002年1月26日(土)に、青山学院大学渋谷キャンパスで開催された。 -->



『協同の發見』131号(2003年6月刊)


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